スパイごっこ!
ハルノユウレイ
プロローグ
ただ、暗かった。
光とかはなかった。味方はいた。仲間もいた。でも、それは私にとって「光」とはならなかった。助けを求めようなんて、わがままだったような気がしていたから。
なんでこうなったのかは分からない。私が悪かったのかも、とかも思ったけど、それを言ったところであの子たちは私を許してはくれないだろうな、って思った。
「みてみて、泣いてるよ」
「うわガチやん」
「どうすんの?」
「別に良くね?先生もうちらのこと怒らないし」
私のことを大切に育ててくれていたお父さんとお母さんは、もう私にはあんまり興味が無いみたいだった。産まれたばかりの妹に気を取られて、私の話は聞いてくれなくなった。
別にそれが不満なわけじゃなくて、元からそうだったからいいんだけど、今まで頼っていた人が突然自分じゃない誰かのところに行っちゃうと、どうしようもなく悲しくなった。
だから、ひとりで生きることにした。
身寄りのない子供が溢れているこの時代、私一人がどこかうろついていても、誰かに声をかけられることも無い。少し田舎の方に行けばすぐそこは無法地帯。ものを盗っても、上手く逃げれば捕まらない。さらに奥の方へ行けば、加害者だった人が死体となって転がっているような闇の世界。
上手く生きるにはここしか無かった。
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