第35話スチル
勉強しろと言われ我らはそのまま無視をしていき、上へ上がる。
自室へ行くとそこはお約束、ノラえもんが鎮座していた。
私達はノラえもんに抱きつく。
具体的には私以外の幼馴染達が2人ともノラえもんにへばりついた。
仕草的には多分抱きついたとかいうシチュエーションだが、へばりついているという言葉の方がしっくりくる。
ノラえもんは現実になるとそこそこ幅が大きいので、2人が抱き付いても補える。
2人はリーシャに感触の感想を伝えてくる。
「もちもちしてますよ」
「結構軟体感触だよな。笹餅だぜ」
ジャニクが笹餅の感触を知っているのはこの前私が笹餅を試食させたからだ。
もちもちしているのか。
場面を見ているとノラえもんは吹き飛ぶとポヨポヨだったから、納得だ。
「ノビノビくん、いきなり抱き付いてどうしたんだい。またシャイアンに虐められたのかい?」
「ああ、私達はノビノビくんでしたね」
アルメイは恍惚とした顔を浮かべ、ノラえもんから離れる。
無表情なのに恍惚を表現できる彼女の筋肉は良く分からない。
ノラえもんが一通り質問して2人はその質問に答える。
確かゲームのタイトルはもう一度あの空をというものだったよね。
あやふやになった。
一度しか聞いてないし、その後は目まぐるしくて。
「あの空をってなにか異変が起こるのかなぁ」
「どうしたのですか」
「シナリオどんなのかなって、気になって」
笑みを増やして答え、ノラえもんの質問が変わるのを感じた。
「そういえば、裏山でなにか空から落ちたって噂になってるみたい。周りに居る猫達がとても心配して気になっているようだ」
「お、クエストかな」
こういう始まりのクエスト見たことあるよ。
「私も心配です。裏山に行きましょう」
「裏山もあるのか!?すげえ!」
ジャニクがワクワクしながらはしゃぐ。
それを微笑ましく見守る大統領たち。
平和なゲームだ。
「全員ノラえもんについて行くよ」
大統領が攻略本をしてくる。
まあ、ネタバレしない限りはなにも言わないでおこう。
「タケコフターを頭に付けて」
ノラえもんがポケットからタケコフターを取り出し、自分達は全員窓から出る。
こういう行動もAIなんだな。
AIの成長がすごいのかもしれない。
既に大統領によって学習させられており、作り込まれているに違いないと期待。
果たして、このゲームで攻略本があった場合役に立つのか疑問だ。
AIによる学習の行動はその時その時、変化する筈。
「うおお、この窓から出る行動、ノラえもんだな!」
同じく窓から出るジャニクは裏山へ一目散へと向かう。
メインストーリーの案内役に早く早くと急かす。
ノラえもんは「待ってよ」「早いよノビノビくん」と臨機応変のセリフを言う。
「AI凄い。ただの現実だ……」
ノラえもんの世界にトリップとか、なり代わりの二次創作だよ。
どのノラえもんゲームよりも先を行き、シナリオ面も本編と引けを取らない。
楽しすぎて怖い。
そのまま裏山へストレートに行くわけもなく、ノラえもんの住む街も作り込まれており、普通に歩き回れるので寄り道。
私もゲームをする時にストーリーそっちのけで探索することがある。
宝箱とか調べられるところを余す事なく、片っ端から調べるタイプ。
アルメイらも初めて体験するゲームの探索に余念がない。
ノラえもんはメインストーリーの座標扱いをされているので空にずっと留まっている。
こういうの良くある良くある。
「宝箱も用意したよ。どんなゲームでもあるみたいだしね」
大統領、流石、分かってらっしゃる。
ゼクシィの大統領を誇りに思う。
「見つけた」
リーシャは目の前にある小箱を指差す。
ちょっと浮いているのは仕様みたい。
3人はそれをまじまじと見る。
見つけた私に開けろと2人は催促するので、そこへタッチする。
ゲームらしいところがさらに増えた。
「メモリアルだ」
「えへへん!大統領は必死に色々考えたのさっ」
「メモリアル。ふおお」
見ない。
アルメイがふおお、と言いかけて必死に耐えた場面なんて見ないよ。
「ノラえもんとノビノビ、友達のシーンを切り取った風のブロマイドというかスチルか」
乙女ゲーム系とかであるスチルを宝箱の中に入れたようだ。
ふんわりとした絵柄で描かれた絵は描き下ろしだ。
地球に依頼して制作したと大統領が鼻を伸ばす。
そのまま天まで届くかもね。
そうか、地球とやり取りしていたのはこういうことか。
勿論、ゼクシィでもこういうことが出来る技術はあるが、大統領は元祖とか、ネタ元とか、還元とかも考えているから依頼したのだろう。
ゼクシィで消費してぐるぐる回せるが、地球の原作リスペクトもあるのだろう。
地球の人達もこのゲームをする時にスチルは地球が提供したことを知ったらかなり身近に考えてくれるだろう。
提供元は地球なのでそういうところを大切にしてくれるから、大統領に任せられる安心感。
ゼクシィの技術はすごいとこのVRを通してさらに感じられる。
生き生きと動くキャラ達はもう生きているに等しい。
「宝箱俺も見つける」
ジャニクは掛け出す。
街中だけじゃなく、山とか人のうちとかにも配置されていそうだ。
RPGだってそういうシステムだもん。
「私は家にお邪魔しよう」
シスカちゃんのうちへ向かう
ズネオのうちも捨て難いけど、女の子のうちにありそう。
中に入って部屋へ上がると倫理観を超越した捜索が始まる。
クローゼットをあけるとなにもない。
服はあるけど、触れない。
ということは、ここは表現規制をされているってことか。
女の子のクローゼットを漁るのはアウトだけど、ゲームだから。
次々開けて行くと行き着いたのはベッドの横にあるドレッサー。
ドレッサーの鏡がピカピカと光り存在を放つ。
それに触れると宝箱が現れてぱかりと開く。
そこにスチルがあった。
スチルはシスカとノラえもんたちが遊んでいる絵で、見たことがあるやつ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます