嫌われたかったのに
好感度だけ高めてフェイレオを見ようとしたからその罰が当たってしまったのだろうか。
私の不純な行動が今後の展開に悪影響を及ぼしてしまったのだろうか。
フェイレオは二人で愛し合って欲しかっただけなのに、私を愛している。
「ゲームをしてる時、つまり元の世界で俺はどんな風に見えてた?」
私の状況を理解したのかフェイが元の世界の話を聞いてきた。
「二人の間接キスとか、距離感とか、全てに感謝してました」
もう隠す理由はどこにもないので、ありのままを伝えた。
「そーいや、お前ら二人が間接キスするのが嫌でフェイが食ったもん俺が食ったな」
「確かにレオは人との距離感がおかしいので…けどそんなの見て何が面白いのか俺には分からないな」
さっきまでは二人が知らない人のように怖かったが少しづつ空気感が戻ってきている気がした。
「と、ところでどこに向かってるの?」
「俺の家だ。今、新しい家を契約中だから明日には三人で暮らせるぞ」
レオは楽しそうに私の頭を撫でながらそう言った。
「強引でごめんね。けどルリも嬉しいでしょう?俺達とずっといられるし、愛されるんだから」
もしかして私は二人のヤンデレ属性を呼び覚ましてしまったのかもしれない。
「さっきも言ったけど私は別世界の人間なんだよ?二人の好きな人は私じゃないって。だから元に戻ろうよ」
腐女子だからではなく正直この二人と一緒にいれば身が持たないと悟った。
元の世界でろくに恋愛なんてしていない私は誰かを好きになるという感情が理解できていなかった。
「じゃあ俺はゲームのキャラのルリが好きなんじゃなくてお前が好きって事だ。俺はルリが好きだから何の問題もねぇっしょ」
「私は!ゲームのヒロインみたいに優しくないし可愛くもない!好きとか分かんないし、二人が好きになった私は偽りの私なの!」
私を愛すよりもフェイレオがいいなんて馬鹿げているかもしれないが、私に彼女は荷が重すぎる。
「だから言ったじゃん」
「え?」
「どんなルリでも愛すって。もっと乱れた姿も見たいし、涙も見たい。笑顔だけじゃなくてこの手で友達じゃ見られない姿を見たいんだ」
フェイは私の頬に触れて私を見つめた。
互いの唇が触れる寸前、乗り物の動きが止まった。
「おら、着いたぞ。フェイ離れろ」
レオに軽々と持ち上げられた私は目の前の豪邸に目をぱちくりさせた。
「レオん家ってこんなにデカかったの…?」
「そりゃあレオは昔からある貴族の家の子だから。こう見えて俺達よりもレオは由緒ある家柄だよ」
ゲーム内にそんな設定は無かった。
ただ私達は貴族の子で同じような階級の子供だと思っていた。
「ほら、部屋行くぞ。さっさと愛し合わねぇとな。初めてはどっちがいい?」
レオに担がれた状態でいる私の心拍数は上昇を続けていた。
「私は友達のままでいたいよ。二人ともまぁ色んな意味で好きだし。今まで通りの関係でいよう、ね?」
無言で歩く二人に声をかけても返答はなかった。
「ねぇ二人とも、前みたいに三人で笑ってお菓子食べよう?」
私はただ前のように戻って欲しかった。
フェイレオが好きだからという理由もあるがそれ以上に私は二人からの重い愛情に耐えきれそうになかった。
元の世界の母の口癖は『愛なんて一時の迷いにすぎないんだから』だった。
父に不倫されていることが分かった母は私によくそう言った。
だからまともな恋愛感情はないし、人を好きになることに臆病になっていた。
そこに沼ってしまったら二度と抜け出せなくなる気がした。
「っざけんなよ。こっちはずっと期待してたんだぞ。黙って愛されてりゃいいだろ」
「大丈夫、ひどいことはしない。ルリが良い子でいてくれたらただ幸せになれるんだ」
狂った二人の瞳は私に新しい扉を開かせそうで怖かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます