居待月
ウサギは跳び回る
うさぎは跳ね回る
あなたが嫌いと
うさぎは言う
あなたが好きと
ウサギは言う
愛って何だった?
愛ってどうだった?
忘れ去られた想いは歪んで歪んで
ひび割れて、壊れていく
縛って、囲んで、傷つけて、閉じ込めて
それでもまだ満たされない
だから裏切ったの?
だから拒絶したの?
だから逃げ出したの?
安心も満足もできないまま
冷たくなるウサギにウサギはただ寄り添った
絶望だけの夜を超えても
希望のない朝を迎えるだけ
そして、誰からも忘れられ、新しくウサギを迎え入れた頃だった。
ウサギが惨殺されていた。
その傍に落ちていたのは、真っ赤なカッター。
そして、子供が一人、行方不明となった。
「え………?」
「こうやって聞くとさ、同じことが起きているってわかるんだけれど、当時はわからなかったんだよね」
彼女は夕焼けに顔を向けた。
その表情は分からない。
それが繰り返され、ようやく過去の事件に繋がった。
最初は子供の悪戯だとか、頭のおかしな奴が殺人鬼だとかそう思われていた。
けれど、証拠はない。
ウサギの死体の傍に落ちているカッターについている指紋は失踪した子供のものでしかなく、
そしてどれほど探しても子供は見つからないまま。
やがて、カッターの持ち込み自体が学校で禁止された。
けれど、その後ははさみやナイフなど、あらゆる刃物に成り代わっただけで、何も変わらなかった。
ウサギを学校で飼うことも禁止となったが、山に囲まれた田舎町だ。
野ウサギが当たり前にいて、学校で飼わずとも、それらの事件の犠牲となった。
年々犠牲者が増えていく。
そして、それは子供が多かった。
そんなあるとき、その町の神社の娘がこう言った。
『呪いだよ』
思わず息を飲む。
それくらい彼女の語り口は臨場感にあふれていた。
「まあ、それが私のご先祖様」
「え?!」
吃驚して彼女を見れば、彼女は緩く笑って、
「大したことはないわ。神社だから、そういう子が生まれやすいってだけ」
夕焼けに背を向けた。
「アナタは違うの?」
「さあ、どっちだろうね?」
微笑む彼女が眩しい。
逆光で表情は見えないけれど、きっと笑っているのだろう。
それでも紅く染まる彼女は、
誰にも見せたくないくらい綺麗で、
哀しいほど美しかった。
鼻の奥がツン、としたのを夕焼けのせいにして誤魔化した。
月は夢を魅る
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