第24話 帰還

 「だったら、あの時のことは本当だったんだ。これが、フィーネさんから貰った、祝福者の力なのか?」

 動く様子のないゼネスピアに警戒しながら、6本の黒い何かを注意深く観察した。

 「フィーネさんは、こんなおっかない力を僕にくれたのか?」

 ゼネスピアを仕留めたその力を、凛人は間近で感じる。

 その刹那──────。

 『ギャガァァァァァァ!!』

 「うわっ!まだ生きてた!?」

 まさかのゼネスピアが息を吹き替えした。

 体は漆黒の触手で固定されていて動けそうもないが、血を垂らしながら開けた口元から、魔力の塊が出来上がっていた。

 「しまっ──────」

 必死に凛人は自分の顔を両手で覆い隠した。

 手と手の間から、それは見えた。

 凛人の足元のすぐ近くに、また新たな5本の漆黒の触手が現れたのを・・・・。

 「嘘だろ!5本も!?」

 どう考えても自分の意思ではなかったが、5本の漆黒の触手は一直線にゼネスピアを襲い、その内の1本が他4本より高く伸び上がり、頭部を貫いた。

 勝敗は決した。

 魔力の塊は消え、その後には、ゼネスピアの巨体が紫色の塵となって消えた。

 「あいつ事態も、消えるんだ」

 他のモンスターとはまた違う絶命の証拠を見せ、凛人と天宮寺達の四人。

 そして─────ゼネスピアを滅した合計11本の、漆黒の触手のような何かが残された。

 「これ、結局なに?てか、どうやって出したんだっけ。まあ取り敢えず、」

 ゼネスピアを退けても残るものに、

 「も、戻れ!」

 と、言ってみた。

 結果、何も変わらず。

 「えぇ~?僕、こんなのの操作なんて知らないぞ?」

 とは思いながらも、その数秒後に、霧散する形で消滅した。

 「あっ、いけた、のか?まあいいか。消えたことは消えたんだし」

 意図せずとも消えてくれたことに安堵しながら、先ほどのことを思い返してみる。

 やはり思い浮かぶのは、あの黒い何かだ。

 正体不明だが、あの日にフィーネから授かったもので間違いはないだろう。

 ついさっきのことにも関わらず、思い返してみてもやはりあの衝撃が出てくる。

 「まさかあんな怪物を一瞬で・・・・。すごいな・・・・・・・・・本当、フィーネさんって何者で・・・いやそれどころじゃない!」

 一度落ち着き、凛人は倒れた四人の方を見た。

 四人とも気絶しているせいで、動けるのは凛人しかいない。

 「早くどうにかするか、人を呼ばないと。こんな森の中じゃあ、何が出るかなんてわからない!」

 1歩、側に近づいた瞬間、頭に鈍い衝撃が走った。

 「痛った!」

 何かがぶつかった痛みで頭を抑えると、足元に何かが転がってくる。

 木製の棍棒だった。

 しかもそれには見覚えがある。

 それは篠塚と討伐した、ゴブリンが持っていたものと同じものだった。

 「こんな時に・・・・・、なんで次から次へと!」

 ガザガサと草木が擦れる音を出しながら近くの草むらから、5体ほどのゴブリンの群れが現れた。

 どの個体も、様々な武器を手に、こちらをじっくりと観察してから、スタートを切ったように一斉に走り出した。

 「やめろ!みんなには近づくな!」

 凛人はゴブリン達の前に立ちはだかる。もう一度、あの漆黒の触手を使えればすぐに勝てるはず。

 

 しかし漆黒の触手は、幾ら念じても現れなかった。

 

 (しまった!僕はあれの使い方なんて、元から知らない!)

 「う、うおおおおおおおおおおおおお!!」

 使えないことを知り、凛人は無策に突っ込んだ。

 やけくそだ。

 ゴブリンを倒すどころか、追い払う方法すらも、一つも思い付いていない。

 そんな凛人の横を、シュンッ!と、何かが通りすぎた。


 「顕現しろ、聖騎士パラディン!」


 銀色の光が輝く。

 黄昏ヶ丘高校の体育館で、スキル【聖騎士パラディン】を持つものが現れたときに発生したものと、同じだった。

 ザン、という剣を振るう音が鳴り響き、ゴブリン達は一瞬で胴体を裂かれ、絶命した。


 「ふぅ。危なかったね。無事かい?」

 

 「せ、生徒会長!?」

 刃に付着したゴブリンの血液を払い、いきなり現れた、黄昏ヶ丘高校生徒会長にして、スキル【聖騎士パラディン】の使用者。

 立川要がそこにはいた。

 「なんで生徒会長がここに?」

 あまりに意外すぎて、凛人は立川に積めよった。

 少し困った顔をするも、微笑みを崩すこと無く応答する。

 「君たちの班だけやたら遅かったからね。だから皆を見てくるよう指示されて来たんだけど、随分と、想定外のことがあったようだね」

 悲惨な景色を見つめて立川は目を細めた。

 「生徒会長、その、僕、」

 「ああ待って、話は帰って傷を癒してからでいい。ほら、近衛兵の方々も来た頃だよ」

 立川が凛人の背後を指差す。

 「おおーーーい!!怪我してないかーーー!!いや、とんでもないことになってんな。お前ら!怪我人を運ぶぞ!」

 遅れてやってきた7人の近衛兵達によって、日比谷達四人は無事に担架で運ばれて行った。

 一人の近衛兵が、凛人のもとにも来た。

 「君は軽傷のようだが、大丈夫かい?」

 「僕なら特に怪我はしてません。それより皆は────!」 

 「心配するな。すぐに医者のもとへ運ぶ」

 その返答に、ほっ、と安堵して胸を撫で下ろす。

 そうして授業は終了した。

 あまりに大きすぎる疑問を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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