第2話

「大翔君、お待たせっ」



6月初めの土曜日。



部活の無い大翔君と駅で待ち合わせをして、一緒に図書館に行く約束をしている。


待ち合わせの時間は、午前10時。



そして今は……。



「今、何時か知ってる?」



冷ややかな口調で尋ねられ、慌ててスマホの画面で時間を確認した。



「10時…20分を過ぎたところです……」



「待ち合わせって、何時だっけ?」



「10…時です」



5つも下のくせにっ。


小学生のくせにっっ。



どうして、こんなに威圧的なのよっ?



そりゃ、遅れた私が悪いんだけどさ。


何も、そんな目で見なくたっていいじゃないっ。



「昼ご飯、由佳の奢りね」



「えっ?こんな貧乏高校生に、お昼奢らせるのっ?」



慌てて言い返すと、彼はそっと私の耳元に口を近付けてきて。



「別に…体で払ってもらってもいいんだけど?」



そう、意味深に囁いてきた。

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