13 『鍛治入門書』
そんなこんなで、『生産ギルド』に加入希望を伝えたところ、加入に際しての試験をする事になった。
試験内容は、自力で『ショートソード』を作製しろ。
で、少しでも才能があるって事を認めさせろ。との事だ。
『生産ギルド』のギルドマスターの名は ドグラス・ラドクリフ って言うらしい。
みんなからはドグラスさんや、マスター、ギルマス、ギルドマスターって呼ばれてるって事で、呼び方はなんでも良いって事だ。
今のところは、ドグラスさんって呼ぶことにした。
ところで、このギルドマスターは世界で指折りの『マスター』級らしい。
冒険者ギルドの中でもランクがあるように、生産ギルド内にもランクがあるらしいのだ。
見習い、下級、中級、上級、その上がマスター級との事。
ちなみに、あの有名な『ヴォルクス』って言う工房の鍛治職人たちはみんな、中級以上だそうだ。
前置きはここまでにしておいて――。
――そもそも鍛治をやった事のない俺がどうやるんだって話だけど。
ドグラスさんから『鍛治入門書』を受け取り、
「まずは、作製に至る工程の熟知からだ!」と言われた。
――それから、
「どうせ行くところと言えば宿くらいだろ?なんならここの工房に寝泊まりしても良い!飯は自分でどうにかしろ!それに工房は好きに使って良い。だが、人の道具は使うな。商売道具だからな。金床と炉は好きなのを使え。金に余裕あるなら槌くらいは自分で用意しろ」
……そう言われても、分からない事ばかりである。
加入試験は一週間後との事で、金属はこちらで指定する。
その金属を使用してショートソード作製。
試験内容はこんな感じである。
こうして何から手をつけたら良いのか。と言う状態だから、まず言われた通りに作製に至る工程を知るところから初めてみることにした。
渡された『鍛治入門書』を読み進めて行くと、いくつか基本的な事が分かった。
鍛治工程についてだが、工程は大きく分けて四つあるらしい。
・金属素材の選定
・熱する
・鍛錬
・研磨最終仕上げ
この四つ。まんまと言えばその通り。
「この臭い懐かしさはあるけどあんまり長居したくないかしら」
腹の虫と金切り声が頭の中で響いた。
「ごめんねレティ……もう少し読んでおきたいんだよ。……それにもうそろそろお腹も空いて来た頃だよね」
「もうそろそろ?随分前からずっと腹の虫はなってるのよ。こんな石畳のところで寝てられないかしら。レティは美味しいご飯と温かいベッドを所望するかしら」
「……はいはい。分かりましたよレティ姫。……ところでさ、『金属素材の選定』なら俺のスキル鑑定で調べる事は出来そうだと思うんだけど……どう思う?」
「……それはきっと、おそらく、たぶん、鑑定スキルでどうにか出来るかしら。……良い素材を選ぶ。そんなのそこいらの鍛治職人なら出来て当然なのよ。それでも、『ヴォルクス』があんなに高価で世界一の武具工房……と謳わせるのにはまだその他に何かがあるってことかしら」
レティの
レティの言葉を気にしつつも、俺は教本を読み進めていくことにした。
1.金属の選定だ。より強度を高めるためには金属の特性を知るところから――らしい。
金属単体だけでは強度を出すのに限界があるらしい。
そこで二種類かつそれ以上の金属を配合または錬金して強度を上げていくらしい。
金属には粘度・硬度という概念があるらしい。
それらの特徴ある金属を複数合わせて鍛錬を行うと、より強固で粘り強い武具が出来る。
簡単に言うと、
欠点のある金属と、その欠点を補える特性を持つ金属を合わせて鍛錬。その金属から武具を作る。
だから、金属の特性を知る必要がある。
だそうだ――。
2.金属を熱する。
金属を熱して溶かす――。
言葉のまんまだ。
選んだ金属から武具を作るためのひとつ手段として、熱して溶かしてひとつの金属にする。
3.鍛錬。
溶かした金属の不純物を無くすため、叩いて延ばして重ねて再び叩く。を、繰り返す事によって幾つかの層ができて強固な金属になる――。
――叩けば叩くだけ良いのか?
4.最後に研磨。
磨いて刀身に刃を付けていくらしい。
そして最終仕上げ。
刃紋を付けて、最後に自分の銘を刻む。
さらに読み進めていくと、また新たに分かったことが四つあった。
・作製した武具に特殊な効果を付与出来る
・特徴効果の付与は極めて困難かつ成功確率も極めて低い
・マスター級になるにはそれを成功させたという実績が必要
・武具に銘を刻めるのはマスター級認定された者に限る
俺はどうなんだろうか。
不安だ。
俺はこうして鍛治職人を志す事を決めたが、果たしてこれが俺に出来るのか。
一応、鍛治職人になると決めたからには、やはり上を目指したい。
追放された落ちぶれ元貴族の俺に出来るのか。
加入試験まで残された時間は一週間。
その間で、ある程度ものになりそうなショートソード作らなくてはならない。
このど素人の俺が。
レティの力を借りたらと考えたが、そもそもレティは先の通り戦闘特化した俺専用武器。みたいな物だから――。
不安だ。
こうして『鍛治入門書』を読んでみたは良いが。
……まぁいいか。
とりあえずやってみよう。
◇◆◇◆
【後書き】
拙作なのに、ここまで読んで頂きありがとうございます。
展開的にゆっくりになってしまったかもしれません。
ちなみに、良くありがちな展開かもしれません。
「早く書けよ!」「新作なんて書いてんな!」
「はよー一章終わらせろ!」
と感じられた方、応援の意味で作品フォローや⇩下の★での評価お願いします!!
【宣伝】
このタイミングで新作を書いてしまいました。
プロフィールから行けますので、よろしければどうぞおおおお!!!
転生ものです
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