3 合法ロリ男の娘大学生は達成未満
まじで道に迷った。
「乃々華ねぇ。いるー?お願いだからいてくれー?」
山の中をもう3時間も彷徨っている。水も食料も殆どのこっていない。ランドセルに入っていたカロリーメイト(フルーツ味)とミネラルウォーター(軟水)と男梅飴(塩分補給用)はもう底を付きかけている。
「もうやだぁ。なんで俺がこんな目に合わなきゃらならないんだよぉ!」
夜の飛騨の山中に無理やりひりだした美ロリ美幼女萌えボイスが鳴り響く。
「ままぁ!もうお腹すいたぁ!コロッケ食べたいのお!」
あまりのストレスに俺の人格がどんどん幼児退行していく。
「ぱぱぁ。すばるもうやなぁのぉ!歩けないのぉ!ふぇぇぇ!」
頭がおかしくなりそうだ。どうあがいても山小屋にたどり着けない。春とはいえ夜の山は冷えており白スクとハイサイソックスしか来ていない俺の体から熱という熱を奪っていく。
「うぇぇっぇえん!やーーーー!」
疲労感で膝をつき山の斜面でうずくまって泣いている。俺の精神はもう完全に幼児退行しており、こうしてモノローグで冷静に俺などと言っているメタ思考とは別に何もかもがめちゃくちゃになっていた。
「うぇぇぇぇっぇーーーん!あああああぁ」
と、その時異音が聞こえた。
ぶぶぶぶぅぅっぅーーーん。
エンジンの駆動音のような小さな重低音が妙なドップラー効果を起こしながら俺の耳に届いた。
「す、ば、る、ーーーーーーーーんんん!!!!!!!」
光が俺の目に届いた。
暗がりの山に生えた木々の隙間から照らされた中型バイクのヘッドライトが俺のうずくまる姿を捉えた。
「の、の、の、ののねー、のバガーーーー!!」
朝方ぶりの乃々華ねぇとの再会に、幼児退行した俺の精神は怒りと嬉しさと恥ずかしさとあともう何だかわからない感情がぐちゃ混ぜになったせいで、理由のわからない怒声をあげた。
「す、すばるーー!ごめんやー!すばるんのことだからこっそり下山して麓の街でもんじゃ焼きでも食べてると思ってたら、なんで遭難してるのよー!?」
「うるしゃー。すばる、おなかすちた!ころっけたべるのよ!」
「ああ、何故か幼児退行している。これはもうだめだ、ブートキャンプですばるんのクソガキ性格を治そうと思ったら、いつの間にか幼女になってる。……、これはこれで声優としてイける……かも?」
「うにゃーーー!ののねー、すばるお腹すいたの!さむい!だっこして!」
それ以降は覚えていない。
「あ、すばるんだっこしてほしいの?そうかー。お姉ちゃんが抱っこしてあげるから。いまからコロッケ食べたいの?じゃあ、山を降りて麓のレストランでおいしいころっけたべようね」
もえ~、という声が聞こえた気がした。
どうやら俺のブートキャンプはここで終わりのようだ。
目標、達成できたのだろうか。
結論。
達成! ……、ならず!
続く。
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