7話 お披露目会②
「何その枝?お水遊びの次はチャンバラごっこかしら。」
水をかけられたからか、リエルはいつにも増して不機嫌である。
「まあそうカッカすんなって。まだ技能名を言ってなかったな。俺の技能は〈
そう言って枝に水を纏わせると、地震が起きた時の湖のように表面に
アレクは超高速で波打つそれを、近くの樹木に向けて一振り。
途端に樹木は真っ二つになり、断面はそれはもう綺麗なものだ。
平然と樹木を真っ二つにして涼しい顔をしている十二歳の少年を前に、リエルと僕はドン引きしていた。
「剣じゃなくても、剣に見立てられる棒形状の物ならなんでも水魔法と併用できるぞ。でも多分、棍棒とかは無理だろうな。一応俺固有の戦技ってことになると思う。」
通常、魔法は生成から発射までのことを言い、発射の段階に指向性を持たせることはできる。しかし、一般的にその場で留まらせることや自由自在に操ることはとても高度なため、そういった技術は戦技や固有魔法として扱われる。
「二人とも威力も応用力も桁違いだね、僕のは少し控えめだから、見劣りしちゃうな。」
「そう言わずに早く見してくれよ。」
「今やってるよ。」
「「え?」」
「だから、今やってるんだよ。」
そう、さっきから、いやここに来てから僕はずっと技能を使っている。
二人の様子を見て確信したが、技能が発現するとその全容がなんとなく頭の中に浮かんでくるのだろう。
だからまだ試してもいないのに「治癒魔法を高度に」とか、「多分、棍棒とかは無理だろうな。」などの憶測が混じった、けれども確信したような言葉が出たんだ。
まるで生まれた時から知っていたことを思い出したように。
それは僕もおなじだった。
ハートの場合はそのような感覚に加えて、薄いガラスの板のようなものが見えていた。
これはハートの技能〈
便宜上ステータスプレートとでも呼ぶべきそれには、各種ステータスや状態異常、装備による能力上昇などが記されており、右下にはハートのアバターのようなものが記されている。
そして一番注目すべきは、各種ステータスの横に(+1)などの数字が見える事だ。
感覚によると、これは経験値取得によって上昇した能力値を示す。
つまり
基礎能力値(+上昇値)
といった形になる。
この上昇能力値には、魔物と呼ばれるモンスターが深く関わっている。
人々は瘴気と共存している動物を魔物と呼ぶ。
それらは特殊な体躯や能力を宿していることがあり、殺すと体内に宿した魔素が放出される。
通常放出された魔素は放っておくとただ霧散するだけだが、ステータスコンバータと呼ばれる
コンバータによって上昇した能力は永久に無くすことができず、コンバータに内蔵された宝珠によって上昇する能力が決まる。
筋力ならば赤色の、速力ならば青色の宝珠と言った具合だ。
そして、〈
「やってるって、何をしてるんだ??」
「僕の技能は〈
全く変換できない!
僕の上昇値は今は全項目合わせて3ポイントしかない。
なのにたった1ポイント動かすだけでこんなに集中力と気力を要するなんて予想外だ!
「それって、全くレベリングしてない子供の私たちにとっては、ほとんど無いのと同じよね。」
「薄々感じてたけど、そんなにズバッと言うことないでしょ!?」
「ああ、だが逆に言えば同じ武器、同じ戦闘スタイルを生涯かけて磨きあげなきゃいけない他の技能よりも、より多彩で柔軟な動きを可能にすることができるってことだが、まずはその顰めっ面からどうにかしないとな。」
そう言ってアレクは一人ツボに入って笑い始める。
どうやら〈
この、恐ろしく低い変換効率に。
「あ、やっと1ポイント動いた!」
「やっとか。ほれ、この棒やるからなんかしてみろ。」
先程、樹木を真っ二つにした名剣を手渡されたが、筋力値が1増えたところで差は微々たるものでしかない。
それでも、えいや!と力を込めて振った瞬間、ボロボロに砕け散ってしまった。
「おお、すげえな!怪力すぎて枝が砕けたぞ!」
「あんたってほんと性格悪いわね。あんな枝で木一本ぶった切ったらそりゃ耐久値ほぼゼロでしょう。」
「アレク!!」
「わかったわかった、悪かったよ。バカにするつもりはなかったんだ、許してくれ。」
「次は無いからね。はあ、もうこれくらいで勘弁してくれ。劣等感で死にたくなりそうだ。」
「よし、じゃあお披露目会はこれくらいにして、俺がなんでそんなに帝都に行きたがっていたか説明しようじゃないか。」
「別にそこまで大袈裟に言うことでもないと思うけど、気になっていたしちょうどいいわね。」
そう言って、リエルは再び木の根に腰かけた。
――――――――――――
種族:
名前:ハート
性別:男
年齢:12歳
レベル:3/100
筋力 6(+2)
持久力 6
速力 6(+1)
防御力 6
生命力 6
精神力 6
感覚 6
――――――――――――
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