「温度」があって、どうしようもないほどにきれいで……

「温度がある」というと、「あたたかさ」をイメージされることが多いかもしれません。
ですが、この物語にはそれだけではない「温度」があります。

抱きしめられるあたたかさも、
やけどするくらいのあつさも、
肌に張り付くような蒸しあつさも、
ぞっとするようなすずしさも、
痛いほどのつめたさも……。

この物語には、確かに、温度があります。

さらに、面白いほど感情が掻き乱されます。
決して嫌なものではないそれは、この物語がどうしようもないほどにきれいだからなのでしょう。

苦しさも辛さも終わりが見えないほどにある中、鋭く光る希望は、たとえるなら、北の空でじっと孤独に光る北極星でしょうか。

ホラージャンルの長編小説は初めて読んだのですが、読む手が止まりませんでした。
「ホラーはちょっと……」と、読まず嫌いしている方も、そうでない方も、ぜひ読んでみてください。

苦しいほどに温度があって、どうしようもないほどにきれいなこの物語を——。

その他のおすすめレビュー

色葉充音さんの他のおすすめレビュー32