私達の物語は雄郷と私で切り拓いたんだ!

獅子2の16乗

プロローグ

 あれ、雄郷ゆうごうがいない?

 服はハンガーラックにかかってる……ん、風が……


 掃き出し窓がちょっとだけ開いてて、風が入ってる。

 うん、雄郷って空を見るのが好きだから……



「おはよう。どうしたのバルコニーで」

『ごめん、起こしちゃった?』

「ううん、大丈夫よ。それより風邪ひいちゃうといけないからこれ着て」

『ありがとう』


 手の甲同士が触れたら――私が当てたんだけど――雄郷が恋人繋ぎしてきた。


「フフフ」

 

「何見てるの?」

『きれいだろ』


 空がすこしづつ薄紅色に変わって、ところどころに浮かぶ断雲が紫に染まっている。


「うん、きれい……すごい」

『だろ』



「ねえ」

『……んっ』



『昨日はありがとう。千桜莉ちおり

「ありがとうなんて言わないで。雄郷が幸せになったのがうれしいし、私も雄郷から幸せをもらったのよ」

『うん……俺で、その満足いただけたのなら良かったけど……』

「バッチリよ。雄郷もよかったでしょ。だから私はうれしいの」



「……んっ」



 山の端や断雲の下縁が輝き始めた。


「もうすぐね」

『うん』

 

 ……来た!


『日の出だ』


「やっぱり太陽はいいね」

『偉大だよ』


「私たちの未来もあんな風に明るくなるよ。きっと」


『千桜莉の横にいるのは一生俺でありたいんだ』

「フフ、それは夕べも言ったんじゃない」

『世界のどこに行っても太陽は神様だから、改めて誓いたくなったんだ』

「じゃ、私も同じ返事をするよ。“手を携えて歩いていきましょう”と」

『うん、よろしくね』



「今日は休日だし、まだ早いから二度寝にする?」

『えっと……』


 フフ。


「何かしら?」

『ハ、ハイ、ナンデモアリマセン』


「冗談よ、行きましょ」


 いいよ。


 …………


 雄郷寝ちゃった。

 疲れさせちゃったかしらね。


 喉が乾いた。水を飲んでこよう。



 ♪

 あ、通知。


 “地震発生 ―時―分 震源地:―― 震度3:――”



 地震か……



 千鶴ちづるさん。

 あなたは大事な時に現れて、ので実のところ迷惑に感じてました。

 でも、私があきらめかけた時、あなたの覚悟に力を得て声を上げることができて、雄郷と付き合うきっかけになりました。この先、あなたが果たせなかったことを叶えることができます。



 千波ちなみさん。

 あなたの心残りを教訓にしたおかげで、雄郷の命を救うことができました。

 それを直接のきっかけとして今の二人、正確には“ゆうべの二人”があります。



 でも、私達の物語はあなた達の物語のじゃなく、私達の物語は雄郷と私で切り拓いたんだ!


 未来、私達を夢に見た子達、私達の物語を見ろ!!


 そして、

 あなたはあなたの物語を見つけて!!!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る