第18話
今回はがんが内蔵や骨などに転移していて、ステージは4まで上がっていた。ステージ4にまでなると、生存率は大幅に下がる。覚悟は決まっていた。
「佑紀君、私が死んだら新しい奥さんを見つけてね」
ここ最近、私は佑紀君が病室にくる度にそんなことを言っていた。もう私の命はそこまで長くないとわかっていたから。無理して笑って、心配されたら平気な顔をして「大丈夫」と言う。弱音は決して人の前で吐かないようにしていた。
「何、またその話?」
佑紀君は今日も午後の講義まで病室にいてくれるらしい。智菜と帆貴はついさっき帰ったところだった。
「だって、私奥さんらしいこと何もしてあげられなかったじゃん。本当ならもっといろんなところに旅行に行きたかったし、いろんな話をしたかったよ。でもね、多分今回でダメなんだと思うの」
結婚式なんて、夢のまた夢みたいな感じになってしまった。キャンセルこそしていないけど、私達があの式場で結婚式をあげるのは多分無理だ。
「…旅行か。最近は調子いいし、外泊許可もらえるかもね」
突然のことに、私は「へ?」と間抜けな声が出る。佑紀君はいつも、私が思っていることの斜め上ををいく。それに何度驚かされたことか。
「先生に、話してみるね」
佑紀君はそう言って、ウキウキで病室を出ていった。
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