第10話

 プランナーさんの説明を受けてから、いよいよドレス選びが始まった。視界に入るもの全てが、真っ白なドレスでいっぱいになっている。

「どのデザインも可愛いーっ♡」

気になったドレスを手に取っては、姿見の前で体に合わせる。佑紀君は、微笑みながらそんな私を見ていた。


「ねえ、こっちとこっち。佑紀君はどっちがいいと思う?」

私は最終的に迷ったドレスを佑紀君に見せた。胸のところが開いていてオフショルダーのような形のドレスと、首から袖までがレースになっているドレス。どっちも可愛いから、私には選べない。

「もう絞れたの?案外早かったね」

佑紀君はそう言って、座っていた椅子から立ち上がった。

「歩ちゃんはまだ若いから、こっちの胸の辺りが開いてるドレスの方が…僕はいいかな」

言われたままに、私はそのドレスを選ぶ。プランナーさんは紙にメモをしていった。

「このドレス着るために、再発しても胸だけは切除しないようにしなくちゃだね!」

私が言うと、佑紀君は泣きそうな顔になった。通院治療に変わったとはいえ、再発する確率は今までと変わらない。それにもし再発したなら、結婚式を挙げるのは難しくなる。

「ドレス…今なら変えられると思うけど…。どうする?変える?」

プランナーさんは私達の様子に気付いたのか、声をかけてくれた。

「藤野様、変更は可能ですよ。いかがなさいますか?」

事情を知らないプランナーさんは、私がまだ迷っていると思ったのだろう。この人もまた、優しそうに微笑んでいる。

「―いや、大丈夫です。この人が決めてくれたものなので」

「素敵ですね…!それでは、カラードレスも今からお選びになりますか?」

私は、はっきり「はい」と答えた。

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