泣きっ面にお姫様抱っこ!?
第19話 泣きっ面にお姫様抱っこ!?
「ギャッ!?」
【菜々子ちゃん、危ないッ!?】
何とかソファから落ちずに済んだけれど、足を滑らせてしまったことに焦ってしまった私はビクッと飛び上がって大きな声を放っていた。
その瞬間を見ていたらしい愛梨さんが私の声に過剰に反応し叫び声を上げる。
――落ちるッ!?
その声に、落ちるものだと思い込んでしまった私は、ギュッと瞼を閉ざして落ちたときの衝撃に備えていた。
だが一向に落ちる気配がない。
代わりに、呆れた声を零した桜小路さんによって、私の身体は抱き留められてしまっている。
「お前は本当に騒がしいヤツだな」
だが突然の出来事に思考が停止し、状況が把握できないでいた。
【キャー、創ったら王子様みたいだわぁ】
愛梨さんが放った黄色い声でハッとする。
ーーな、何事ですか?
桜小路さんの声の近さと身体が浮遊する感覚に目を見開いた瞬間、眩いくらいのイケメンフェイスを捉えてしまい、私はカッチーンと凍り付いたように固まってしまう。
その様子に桜小路さんは、フンッと鼻を鳴らすと、なにやらぶつくさと呟いていた。
「これくらいのことで真っ赤になって、先が思いやられるな。だがいい暇つぶしになりそうだ」
けれど、非常事態に追い込まれた私にはその声を拾うような余裕などない。
代わりに、桜小路さんから続け様にお見舞いされた、やけに楽しそうな声によって、尚も追い打ちをかけられてしまうのだった。
「詳細は菱沼から聞いたと思うが、今夜からお前には俺の寝室で寝起きしてもらう。ちょうどいいからこのまま連れてってやる。落とされたくなかったら、大人しくしてろ」
全身を真っ赤に染めた私は、菱沼さんから聞かされた偽装結婚を装うためのシナリオの一部を思い出す。
ボンッと火を噴きそうなくらい真っ赤になった私は、身悶えることしかできないでいる。
偽装結婚を装うためのシナリオというのは……。
第一段階として、まずは、桜小路さんの継母である
他にもまだあるのだが、恋愛経験の全くない私には、こんなミッションをクリアすることなんてできそうにない、ということだけは確かだ。
けれど桜小路さんはそんな私の懸念など全く意に介していないようだ。
私との身長差が三〇センチという、なんとも羨ましい一八五センチという高身長を活かして、チビの私をあっという間にお姫様抱っこの体勢に変えてしまっている。
そうしてスタスタと寝室に向けて歩き出してしまった。
【創は昔から照れ屋なところがあったから、きっと言えないだけで、菜々子ちゃんのことが好きなんだと思うわぁ。頑張ってね~】
私が処刑台にでも送られるような心持ちでいるというのに、空気を読めない愛梨さんのやけにキャピキャピした声が無情にも響き渡っていたのだった。
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