甘すぎて、
斗花
第1話
和泉くんに「あのバスだから走って!!」って、大きな声で言われて、走ろうとした所を後ろにいた大澤くんが大きな手で私の腕をつかんだ。
そして、低い声で「本宮さんはこっち」って言われた。
一番後ろにいたし、皆すごい走ってたから、私達がいなくなったのにも誰も気付かなかった。
和泉くんが少しコッチを見たような、そんな気もしたけど何も言ってこなかった。
「おーさわくん?バス行っちゃったよ?」
私は残りの六人の乗るバスの後ろを見ながら、大澤くんに腕をひかれるがままに少し小走りで大澤くんを追いかける。
「うん、行っちゃったね」
焦ることもせず、むしろ少し落ち着いて私の腕を離した。
大澤くんは自分の鞄からパンフレットを取り出す。
「大澤くん、次のバス何時かしってる?」
私の質問には答えないでパンフレットを
私に見せてくる。
「本宮さん、ここ」
そのパンフレットに載っていたお店は私が行きたいなー、と少しだけ思ってたお店。
「この場所から歩いて10分くらい。ほら、行こう」
優しく笑うけど、意味がちょっと分からなかった。
「大澤くん、皆に連絡しなくて平気なのかな?」
「大丈夫、あっちゃんが何とかしてくれるから。
本宮さんも気にしなくて平気だよ」
そう言って大澤くんは自分の携帯の電源を静かに消した。
携帯を消す大澤くんを見ていたらまた優しく笑う。
「私も消すね!」
私は携帯の電源を消し、不安な気持ちを抱え大澤くんの後ろを追う。
大澤くんは顔が小さくて、脚とか腕も長くって、私より20センチくらい身長も高い。
私も別に小さい訳じゃないのに。
私達は5月から恋人同士になった。
大澤くんはすっごく人気者だし、私なんて眼鏡をかけて、飾り気もない黒い髪で、別にスタイルも良くない。
だけどそんな私でも『好きだよ』って言ってくれる。
そんな大澤くんが私も大好き。
「ここだね」
道に迷うこともなく、大澤くんは店に着く。そして、私の手を握る。
「せっかくのデートだから、楽しもうね」
デート。その響きにキュンとした。
「でーと……?」
私が聞き返すと大澤くんが小さく頷く。
「デートでしょ?」
その低くて色っぽい声にまた、キュンとした。
「二時間だけ、だけど。」
お店に入りながら
大澤くんが呟いた。
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