第3話
するとゆきくんが私から目をそらし、はぁー、とため息をつき頭を抱えながらしゃがむ。
「ゆきくん?」
「ちょっと、待って」
目を左手で覆い右手を私に向ける。
えっ?!もしかして……!
もうちょっと頼めば休んでくれるかも?!
私はそう思いゆきくんの左手を目から強引に離して、もう一回見つめた。
「ねぇ、ゆきくん。お願いだから、ね?」
するとゆきくんはまた私から目をそらし、つぶやく。
「ねぇ、蘭ちゃん。
お願いだから、触らないで?」
……ガーン!なんでよっ?!
なんで触っちゃいけないの?!
「なんでそんなこと言うの?!」
私がさらにゆきくんを覗くと、ゆきくんが突然バッと顔をあげる。
「蘭ちゃん、悪いけど俺はバッチリ三泊四日、修学旅行に行ってきます!」
そして立ち上がる。
「今日はもう遅いし、恐らく夕飯の時間だろうから、俺はこの辺で失礼します!」
スタスタと扉に向かうゆきくんのシャツを私はまた、掴む。
「なんで?!
なんでそんなに冷たくするの?!
明日から四日も会えないのに、こんなの嫌だよ!」
私が言うとゆきくんは大変険しい顔をしてこっちを向いた。
そして諭すように言う。
「蘭ちゃん。
お願いだから、これ以上見つめないで?」
なぜか苦しそうなゆきくんを見て、これはもう修学旅行に行くなとかは言っても無駄だと判断した。
「じゃあ、ゆきくん。ちょっと目つぶって?」
私が言うと警戒しながら目をつぶる。
軽くほっぺにチューをした。
「いってらっしゃいのチューでしたぁ」
恥ずかしくなり顔を隠すとゆきくんが私を床に押し倒した。
「わっ?!」
「蘭ちゃんが悪いんだよ?」
ゆきくんが迫ってきて、何が何だか分からない。
唇が重なりかけた瞬間。
ガン、と乱暴なノックが鳴り、ほぼ同時に扉が開く。
「フク!お菓子とか持ってー……」
秀はいつも私達が勉強してる時、ノック一回で入ってくる。
「……秀」
そう呟き、ゆきくんは慌てて私の上からどく。
「も、持ってく、持ってく!四つくらい!」
秀はドアのノブに手を置いたまま「そうかー……」と、呟いた。
「フク」
ゆきくんを手招きする。
「ちょっと、来い」
そしてドアを閉めた。
「……ゆきくん?」
ゆきくんは大きくため息をつき頭をかいた。
「じゃあね、蘭ちゃん。
メール送るし電話もするから。
お願いだから、部屋から出ないでね?」
そして、隣の部屋からは秀の怒鳴り声と何やら大きな物音が一時間ほど響いてたのでした。
2010.04.11
無意識な誘惑 斗花 @touka_lalala
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