無意識な誘惑
斗花
第1話
私はこの前、カクちゃんに撮ってもらったゆきくんとのツーショットを眺めながら深く、ため息をつく。
「蘭、うざい」
晴海に言われて顔を上げた。
「だって明日から、ゆきくん修学旅行なんだもん!」
私の彼氏の福本幸也は明日から三泊四日で広島・大阪の修学旅行に行ってしまいます。
「堪えらんない……」
「たった四日間じゃん。
つーか、高校生と付き合ってたら四日会えないなんて普通のことじゃない?」
ちなみに私は中学三年生です。
「隣の家にゆきくんがいないと思うだけでテンションが下がる」
「米倉先輩もいないでしょ?」
ちょっと複雑なので説明しますね。
私の彼氏のゆきくんは隣の家に住んでる超イケてる高校生!
かっこよくて優しくて、頭も良くて運動もできて、本当にハンパなく完璧な男っ!
そして私のお兄ちゃんの親友だったりする。
と、言うのもゆきくんは私の隣の家に住んでて幼稚園の頃からズーット一緒。
私の必死なアプローチの甲斐あって、やっと!
恋人同士になれたのです!
「秀がいない喜びが200で、ゆきくんがいない悲しみが1000。よって、悲しみ800」
私の言葉に晴海は笑う。
「本当にお兄ちゃん嫌いだよね」
「嫌いだよっ!
意地悪だし、偉そうだし。
ゆきくんナシじゃあいつ何もできないもんっ!」
「でも、超かっこいいじゃん」
私は晴海の前で手を振った。
「……なに?」
「晴海、目、大丈夫?」
晴海ははぁ、とまたため息をつく。
「コンタクト、変えたばっかりです」
そして鞄を持った。
「帰るよ、蘭。
福本先輩に一刻も早く会いに行くんでしょ?」
「はーるみー!」
私も急いで鞄を持ち、晴海と一緒に下駄箱に向かう。
家に帰ると玄関にはなんとっ!
ゆきくんの靴、発見!
「お母さん!ゆきくん来てるの?!」
お母さんは夕飯を作りながら笑った。
「秀の明日の準備手伝ってあげてるみたい」
今日もまたゆきくんを秀に取られた……!
私は秀の部屋をガンガンとノックする。
「うっるせーよ!
何だよ?!今忙しいんだよ!」
「ゆきくんは?!」
私の声にゆきくんが後ろからニコニコして手を振ってくれた。
「お帰り、蘭ちゃん。お邪魔してます」
かっこよすぎる……!
心臓痛くて倒れそうだっ!
「ううんっ!邪魔なんかじゃないよ!」
私の言葉に秀が舌打ち。
「邪魔はお前だ、蘭」
こいつ、本当に嫌い。
「バカ秀!
ゆきくんがいないと明日の準備もできないくせにっ!」
すると秀がキレた。
「確認しただけだよっ!
電話とかメールだと面倒くさいからフクを呼んだんだ。
お前、早く部屋行けよ!」
怒鳴る秀の肩にゆきくんが手を置いた。
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