第169話 ルーツ、文化的背景
「うわぁあああああああ!!!」
俺は腹の底から声を出す。
びっくりし過ぎて、もう少しでキャスパるところだった。
”え? なんでこんなとこに人が”
”ジロー以外にも潜ってるやついたんか”
”不法探索者ってこと?”
”うわ、めっちゃ大怪我してるやん”
”いやこれはあれやろ、ジローが言ってた……”
”異世界人?”
”さすがにそれは……確かに見慣れない鎧着てるけど……”
”マジで異世界人? 嘘やろ?”
”いや、こればっかりはもう信じるしか……”
”だよな。懐疑派だったけど、実際にいるとこ見せられたら……”
”本当に異世界人いたんだ”
俺はガタガタと震える。
「な、な、なな、なん、なんで人が……」
”ぐわ、クソもどかしい”
”察しの悪いゲーム配信観てる気分”
”その辺のリアクションは全部こっちでやったから話を先に進めてくれ”
”てかお前は異世界人とすでに遭遇してんねやろ。なんで視聴者よりも混乱してんねん”
四十歳前後くらいの長身の男性だ。
顔色がすこぶる悪い。
腹部の鎧が大きく破損していて、どうやらかなりの怪我をしているようだ。
パッとみた印象では、アラブ系の人かと思った。
褐色の肌で、堀が深く整った顔立ちだ。
(……あれ?)
でも髪は淡い金髪だった。
瞳の色も青みがかっているし、それに髭が全く生えていない。
まあアラブ系の人でもそういう特徴を持った人はいるだろうし、単純に髪を染めているとか、ダンジョンでも身だしなみを整えるタイプってだけかもしれない。
けれど……。
俺も伊達に若い頃、世界中を旅していない。
ソロキャンプするのが目的だったけれど、それなりに人と関わってきて、なんとなく相手のルーツを察する能力みたいなものが養われた。
外見的特徴だけじゃなくて、仕草や見なりから文化的背景がなんとなくわかるのだ。
見た目が似ていても日本人、中国人、韓国人をなんとなく見分けられる人は多いだろう。
それと同じことが世界全体で薄らとできるイメージだ。
でも目の前の男性からは何もわからない。
これまで接してきたどのグループにも属さないのだ。
こんなのコスタリカの殺し屋に命を狙われた時以来だった。
(あの人みたいに物心つく前から、何かしらの組織に育てられたとか……)
そこまで考えて、ふと天啓のような閃きが降りてくる。
「ハッ! もしかして、別の世界の……?」
”やっと俺たちに追いついたか”
”ずいぶん時間かかったな”
”ここだけ切り取ったら名探偵が閃いたみたいな感じなんだけどなぁ……”
「いや、今はそんなのどうでもいいな……」
目の前に怪我人がいるのだ。
相手がどこの誰だろうと、やることは決まっている。
俺は男性に歩み寄り、傍らにしゃがんで、
「うっ」
思わず顔を顰めた。
酷い臭気が鼻腔をついたからだ。
それは刺激臭と言っていいレベルのものだ。
咄嗟に手で鼻を覆いそうになって、気力でなんとか踏みとどまった。
その臭気は、目の前の男性から漂ってきたものだからだ。
装備の汚れ方からして、かなり長いことダンジョンにいるのだろう。
そりゃ当然、体臭がキツくなりもする。
けれど、これは……。
間違いない、モンスターと同じ臭いだ。
モンスターのハラワタと——
(ああ、やっぱりこの人は別世界の人なんだ)
そんなことで確信を持つのも変な話だけど、俺はそう思った。
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