幕間 通りかかった登山客
——ますか? 聞こえますか?
……はい
よかった。安心してください、もう大丈夫ですからね。自分の名前はわかりますか?
名前……
今がどういう状況かは?
……山の中で
そう。山の中で倒れてたとこを発見されたんです。こんなところでなにしてたんですか? まさか、自殺とか……
いえ、キャンプしてて……
キャンプ? こんなところで?
一人になりたくて……
それがどうして、こんな衰弱して
お腹が空いて、その……キノコ食べちゃって……
……ずいぶん若いみたいだけど、いくつ?
十五です
その歳なら、よくわからないキノコを食べちゃいけないことくらい、わかるよね?
すみません……
君は本当に運が良かった。こんなとこに、たまたま登山客が通りかかるなんて。その人がここまで担いで来てくれなかったら、救急車も来れなかったんだからね。あとでちゃんとお礼を言うんだよ
はい……
先輩。彼の名前、まだ聞いてないんじゃないですか?
ああ、そうだった。それで、名前は?
……鈴木
下は?
……じ
じ?
ジローラモ
ジロー、ラモ?
……はい
鈴木ジローラモ?
はい
おい、搬送を急ぐぞ! 意識が混濁してる!
は、はい! すぐにっ!
してないです、してないです……
あ、そうだ。あなたのお名前も……。あれ? あの登山客は?
え? さっきまでそこにいたはずですけど……
おかしいな
……なんか変じゃないですか、先輩
なにが?
こんな険しい山を、一人で登山なんて
そういう物好きもいるだろ。こんなとこでキャンプした挙句、変なキノコ食って死にかける十五歳がいるくらいなんだから
でも……。ああ、そうだ。服が変だったんだ……。ずっと感じてた違和感は、そのせいで……
なに言ってんだよ。普通の登山客の格好してただろ
その服が、全く汚れてなかったんですよ
…………
あの人って、もしかして……
おい、やめろ。俺はそういう話、苦手——
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