第71話 USAドタバタコメディ編
それからは激動の毎日だった。
でもまず一つ、安心したことがある。
アマンダさんがお兄さんに危害を加える気がないと判明したことだ。
どうやら本気で、お兄さんに好意があるらしい。
正直、色々と腑に落ちなかったんだけど……。
でもそれも、二人の因縁を聞いて納得した。
会ったことも話したこともない。
でも一度だけ、すれ違ったことがある。
生まれ育ったルヴェストラという田舎町。
そして、カルカタル・カバル。
その話を聞いた時、真っ先に私の胸に
「なにそれ、ずっる!!!」
という思いだった。
ただでさえ超絶ハイスペックなくせに、そんな因縁を持ち出されたら……。
もうなにも言えない。
とにかくずるい。
私はかれこれ三年間、お兄さんに片想いをしてきた。
それをアドバンテージだと勘違いして、
「ぽっとでのよくわからん女にお兄さんをやるものか!」
とすら思っていた。
でも蓋を開けてみたら、アマンダさんは片想い歴十年だという。
大先輩だ。
しかもアンリの親友として、都合のいいポジションにただ居座っていた私と違って、アマンダさんはお兄さんに釣り合う女になるために、研鑽に研鑽を積んでいたというのだ。
そうなるともう、なに一つずるくない。
むしろ真っ当すぎる。
それが一周回って超ずるいのだ。
……自分でも支離滅裂だと思うが、とにかく私は焦っているのだ。
お兄さんはラストヘイブンダンジョンに居着いてしまった。
海外ダンジョンだから、という理由だけではない。
ラストヘイブンダンジョンは、お兄さんにとって理想郷なのだ。
攻略に興味のないお兄さんが、どうして深階層まで潜るのか。
それはソロキャンプをするためだ。
全体的に冒険者のレベルが上がり、攻略が進んだことで、お兄さんはやむを得ず深く潜っているだけだ。
でもラストヘイブンダンジョンはUDが独占していて、深く潜らなくてもソロキャンプが楽しめる。
しかも冒険者に荒らされることなく、手付かずの自然が残っているのだ。
そりゃもう、むしゃぶりついて離さない。
(もしかしてそこまで計算ずくで、ラストヘイブンダンジョンを手に入れたんじゃ……)
改めて、アマンダさんの恐ろしさを痛感する。
そんなお兄さんとは対照的に、アマンダさんは大忙しだった。
あのジローを味方に引き入れたのだ。
実際のところ、お兄さんは別にUDに加入したわけではないんだけど、周りからすれば同じことだった。
あのアマンダとジローが手を組んだ。
全世界がパニックになったのは、言うまでもない。
それを知らないのは、ダンジョンでぬくぬくとソロキャンプを楽しむ、お兄さんだけだった。
当然、世界のパワーバランスが崩れ……。
アマンダさんは外交のために世界中を飛び回ることになった。
それでも暇を見つけては、お兄さんのプリティなお尻を追いかけ回していたのだから、バイタリティが凄まじい。
そんな状況を
私とアンリも、アメリカに移り住んだ。
アマンダさんは大人の余裕か、私たちを暖かく迎え入れてくれた。
色々とゴリ押しして、ラストヘイブン高校との交換留学、という形になったのだ。
私たちはアメリカのスクールライフを
とはいかなかった。
ラストヘイブンの住民は、ほぼ全員が、アマンダさんの信奉者なのだ。
アマンダさんは住民たちに、特に子供たちに惜しみのない支援をしてきた。
元々スラム街だったこの街が、たった数年で生まれ変わったのは、間違いなくアマンダさんのおかげだ。
ラストヘイブンの住民たちにとって、アマンダさんは女神に等しい存在だった。
そんな住民たちを差し置いて、余所者の私たちが、アマンダさんに目をかけてもらっている。
しかも私たちは
私たちは、そんなつもりじゃなかったんだけど……。
でもアマンダさんを神格化する住民たちからすると、きっと不遜な態度に思えたのだろう。
それに言語の問題もあった。
私も語学が堪能な方ではないけれど、日常会話くらいはできた。
でもアンリはアッポーペンレベルだ。
陰湿なイジメは、日本特有のものだという
とんでもない。
アメリカはアメリカで陰湿だし、しかも過激だった。
きっと人種差別も乗っかっていたせいだ。
その結果——
限界を迎えたアンリがアンリった。
色々と本当にやばかったんだけど……。
詳細については、ご想像にお任せする。
中学時代の惨状の三条を思い浮かべていただけたら、わかりやすいと思う。
そうしてアンリもまた、アマンダさんと同じように神格化されることになった。
ただし邪神として。
そんな『USAドタバタコメディ編、ダイジェスト版』を経験し……。
三ヶ月ほどが経って、ようやく海外生活に慣れ始めた——
そんなある日のことだった。
オランダの田舎の牧草地に「特殊ダンジョン」と呼ばれる、奇妙なダンジョンが出現した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます