第25話
「蒼くん、私ね……。蒼くんとまた、こんな風に一緒に話せるようになってすごく嬉しいんだ」
読んでいた手紙をそっと折り畳み、膝の上に置く。
蒼は
「ずっと嫌われてると思ってたし、もう面と向かって会うことも話すこともないんだなって思ってた。でも……今日、こうして蒼くんとまた会えた」
そこで区切ると、遥は蒼に向き直って笑顔を見せた。
「それは、この手紙のお陰だね。ユウくんが蒼くんに会わせてくれたんだね」
「遥……」
「ありがとうね、蒼くん。最高の誕生日プレゼントだよっ。ユウくんからの手紙も、蒼くんがこうして傍にいてくれることも」
二人に会えなくなることで止まってしまっていた思い出だけでしかなかった時間は、今……動き始めた。
ユウくんには二度と会えない。その事実は悲しいけれど。
でも、約束を覚えていてくれた、そのことが何より嬉しくて。ありがたくて……。
会えなくても、この手紙の中には今の自分に語り掛けてくれるユウくんが確かに存在してくれている。
過去のものなんかじゃなく、今も傍にいてくれているような温かな想いが詰まってる。
「私、二人に出会えて良かった。蒼くんとユウくんに会えて、本当に良かったよっ」
心からの笑顔を浮かべる遥の頬に、今度は嬉し涙がひとしずく零れ落ちた。
『オレは、ハルカとの約束があったから長い入院生活もがんばれたんだ。ありがとな、ハルカ。』
『ハルカは、いつだって幸せに笑っていてくれよな!』
すっかり陽も暮れた夜の住宅街を遥と蒼は並んで歩いていた。
遅くなったので家まで送ると蒼が申し出てくれたのを、そのまま好意に甘える形で今に至っている。
遥的には暗い夜道でも全然平気だったのだが、もう少し蒼と一緒の時間を過ごしていたかったので、この状況は嬉しいものだった。
「実を言うと、俺とユウはいとこ同士なんだ」
「えっ?そうだったの?」
全然知らなかった。
「母方の親戚だから苗字も全然違うんだけどさ。アイツの親も俺の親も働いていたから、いつも帰りが遅くて。近所に住んでたこともあって小さな頃からいつも……気が付いたら俺たちは一緒にいたんだ」
「そう、だったんだ……」
「うん。親は手間なしだったんじゃないかな。二人で一緒にいてくれれば……」
そう話す蒼くんの横顔はどこか寂し気だった。
(それだけずっと一緒にいたユウくんを失った時の蒼くんの気持ちは……。きっと、計り知れないものなんだろうな)
何だか切なくなる。
「そんな中で偶然あの公園へ行った時に遥と会ったんだよな」
「うん……」
私は、ずっとひとりぼっちだったから、あの時二人に出会えて本当に世界が変わったんだ。
「あれだけ毎日一緒に遊んでたのに、会わなくなってからの数年は何だかあっという間だったな」
遠くを見つめる蒼くんの横顔を見つめていたら、不意に視線がこちらへと向けられた。
「ごめんな、遥。俺の行動が逆に遥を傷つけていたんだな」
「そっ……そんなこと!」
頭を下げようとする蒼くんを慌てて止める。
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