第2話

その後、朋ちゃんとは電車が別方向なので駅で別れ、30分程電車に揺られ自宅の最寄駅へと辿たどりり着いた。


この駅は大きくはないのだが周囲が住宅街となっている為、この時間は混雑していて降りる人も多い。

ホームから改札へと向かう人の流れが既に出来ていて、それに逆らうことなく列に沿って歩いていると、不意に前に見知った後ろ姿を見つけた。


(あ……。あおくんだ……)


未だ真新しい高校の制服を身にまとい、だが慣れた様子で改札を抜けて行く。


(高校の制服姿、初めて見たな……。何処どこの学校の制服だろう?)


それさえも知らないのだけど。



彼の名は、山吹蒼やまぶき あお

彼と自分の関係を言葉にするならば、幼少期からの公園友達……と言ったところだろうか。幼なじみとも言えるのかも知れない。

友達ではあったが、幼稚園・小学校ともに別だった為、実は苗字が『山吹』だと知ったのは、学区が一緒になった中学に入ってからのことだった。


蒼くんは、再会を約束をしているユウくんの友達だった。


幼少時、私は近所に友達がいなくて、いつもひとりぼっちだった。

両親が離婚したばかりで母親側に引き取られた私は、兄妹もいなかった為、いつも寂しい思いをしていた。

仕事で家を空けるようになった母。そんな中、静かな家に一人でいるのが嫌で、いつも近くの公園で日が暮れるまで時間を潰したりしていたのだ。


そんな時だった。ユウくんと蒼くんに出会ったのは……。




「オマエ。まだ、かえらねぇの?」


夕日に赤く染まる公園で。

一人花壇かだんの花を見つめながら座り込んでいた私の後ろから二つの影が差した。

振り返ると、そこには知らない男の子が二人。不思議そうに私を見下ろしていた。


「もうみんな、かえっちゃったぞ?オマエ、かえんないのか?」


そう言われて周囲を見渡してみれば、賑わっていた公園はもう自分たち以外誰もいなかった。


「うん。まだ……ここにいるの」


母が仕事から帰ってくるまでは、まだ少し時間があった。それまで外で時間を潰していたかった。

だが、そうして話している間にも見る見る空は暗くなり、夕方から夜へと変化を始めていた。

公園内の街灯が一斉に点灯して、思わず三人でそれを見上げる。


「おうちのひと、しんぱいすんぞ?」


心配してくれているのだろうか。自分たちだって同じくらいの小さな子たちなのに。


「しないよ。だれもいないもん。おかあさん、まだ……おしごとしてるから……」


言ってて何だか悲しくなって語尾が小さくなっていく。


「……だから、まってるの」


泣きそうになるのを耐えるように、再び花壇の方に向き直って膝を抱えた。

すると……。


「ふーん。なら、オレたちといっしょにあそぼうぜっ」

「え?」


意外な言葉が返って来て、驚いて振り返った。


「なっ?あお?いっしょにまっててやろうぜ?」

「うん。そうだね」



それが、ユウくんと蒼くんとの出会いだった。




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