ゴールドマン君の懐中時計


応接室の扉を開けると、背広姿の小柄な人物が、半分凍ったソファに腰掛けていました。

「やあ、スノットさん。初雪の朝に、お会いできて光栄です」


金色の縁の眼鏡。灰色の手袋。胸ポケットには、雪の結晶形のピン。

彼がゴールドマン君です。銀行の「季節資本部」を取り仕切る、信頼厚い若き支配人。


彼は懐中時計の蓋を開き、静かな目で言いました。


「時間が、呼んでいます。噴水公園の宇宙送水は、先ほどあなたも見ましたね。水の栄養を送っても、反応がない。星たちは眠りっぱなし。そこで――」


ゴールドマン君は、懐中時計から薄く白い煙のような地図を取り出しました。


「『未雪(みゆき)の星』へ、あなたの初雪帳簿を持って行ってほしい。雪の街の資産――静けさ、透明、余白、気配、白昼夢――これらを合算し、雪の呼吸として星に届けるのです」


スノットさんは、手帳を開きました。

そこには年ごとに綴じられた、冬の始まりの歌、冷えた空気の光、目に見えないやさしさの伝票。


「ええ、あの星へ……行けるのは、今日しかないのですね」


「ええ、初雪の日だけが、星間の白い回廊を結びます」

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