友達の話なんだけどね

 「友達の話なんだけどね、」で始まる話は真剣に聞くべきだと思う。

 

 友達のことを人に相談する人なんてそうそういないし、恋バナとかだったら尚更だ。こんなふうに、俯きながら話す親友を見て、顔を背けたくなった。


「あのね、その子ね、好きな子ができたんだって。でもね、女の子なんだって。私はね、いいと思うんだ。で、でもね、やっぱり、同性じゃん?ミツキは、どう思うかなって。」

 

 もしかしなくても私のことかと思った。

 

 多分私。

 いや、なんか自惚れてるように感じるかもしれないけど、私とレイは、幼稚園の頃からの親友なんだ。

 どんな時もずっと一緒だし、これからも一緒。恋愛対象として見てしまうのも不自然なことでは無いだろう。

 

 それに、恋には特別な法則がある。

 

 自分を好きな人のことは、自然と気になってしまうものなのだ。

 誰かに好かれているだけで、その人のことを好きだと思ってしまう。


「…別にいいんじゃん?私はなんとも思わないけど。」

「そ、そっか!ありがとう。」


 いつも二人の帰り道。


 レイの家の方が近いから、いつもレイを家まで送ってから自分の家に帰る。

 バイバイした後、レイが自分の部屋の窓から顔を出して、手を振ってくれるまでが私の一日だ。

 レイが窓から顔を出すと、心地よい風が吹いて、ミディアムボブのサラサラな髪の毛が揺れる。レイの髪は真っ黒だけど、陽の光に当たるとキラキラと輝く。


 それ見たさに、いつも家の前で待ってしまう。

 

 近いうちに、あの髪に触れられるかもしれないと思って、嬉しくなってしまった。


「ど、どうしよう、ほんとにレイが私のこと好きだったら...!!」

 

 家に帰ったあと、冷静になって考えてみたら、いや、冷静にならなくても分かるのだが、こんな夢みたいなことあっていいのだろうかというような興奮に駆られていた。


「ほんとに両思いって存在するんだぁ...」

 

 生まれてこの方、今まで片思いオンリーの生活をしてきたため、どうしようもなく嬉しくて仕方ないのだ。

 

 ピコン


「あっ。」

 

 スマホのロック画面に「レイからのメッセージ」と表示されている。

 ミツキは大急ぎでスマホを開いた。


『今日は私の話聞いてくれてありがとう!また相談するかもしれないけど、その時はよろしく💦』

 

 律儀に今日相談したことのお礼を言ってきた。こういうところが好きだ。


『ううん、全然。またいつでも言って』

『ありがとう!』とかえってきて会話は終わった。


 そのままボフッと重力に体を任せて、横になる。


(明日、会えるの楽しみだな。)

 

 自分から告白するつもりは無い。

 追うよりも追いかけられる方がしてみたい。



 

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Lonelylove ハルノユウレイ @haruno_yuurei

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