第3話 休日に森へ

 深緑の森の中、風花の体はふわふわ揺れている。


 夏澄が風花を横抱きにして、森を跳躍しているからだ。


 いつものお姫さま抱っこだ。

 風花はぽおっとなって運んでもらっていた。


「ここだよ、風花」


 かなり森の奥まで来たところで、夏澄は立ち止まる。


 光が差し、葉が黄緑色に透けている森の中、特に明るく陽射しが差し込んでいる場所があった。


 線を描いて差す、淡い黄色の陽射しが見えるようだった。


 陽の光をいっぱいに受けて、水色に染まっている泉があった。


 すぐ見るのがもったいなくて、風花はうす目をあけて近づく。


 泉の前で、ゆっくりと目を開いた。


 澄み渡った水色の泉が、視界いっぱいに広がる。底から光を放つような、ふしぎな泉だった。


 風花は目を凝らす。


 泉の中に透明な粒が見えた。


 炭酸の泡だ。丸くて小さなぱちぱちが、水色の泉の底に沈んでいる。


 一粒、二粒、泡が水面に浮かんでくる。


 泉の表面まで浮かびあがって、空気に溶けて消えた。

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