第11話
「侑くんには、マスカットに梱包材被せてもらうね」
「はーい。私が教えます」
未来ちゃんは大きく手を上げ、嬉しそうに侑くんの隣に付いた。
そして侑くんの手に触れながら、フルーツキャップの被せ方を指導し、何度も何度も侑くんの体に触れ、彼のそばから離れなくなった。
それを見て、侑くんが困っているように感じ、私は2人を離そうと考えた。
「この辺で、15分休憩しましょう。侑くんには次、伝票貼りお願いします」
すると彼女は、「また私が教えてあげるね」と、
侑くんの腕を引っ張り、私から離れた場所に2人で座った。
そして2人は会話を始め、2人の世界が出来上がる。
「侑くんって、何歳?」
「19…こ、ことし、20歳」
「私と同い年じゃん。私、アイドルやってるから、宜しくね」
「あ、、アイドル?す、すごいです」
「ライブ来てよ」
「ぼ、ぼくはあまり歌、聞きません。で、でも、今度、行けたら……行きます」
「やったぁ。チケット、特別にあげる……」
「あ、ありがとう」
未来ちゃんの笑い声が部屋に響き、彼も楽しそうに見え、2人を離そうとした自分が、恥ずかしくなった。
奥さんは、侑くんが私にすぐ心を開き、私をすごいと褒めてくれたけど、
彼の心を、ほんの数時間で掴み取った未来ちゃんは、もっとすごくて、
なんか自分が情けなくなり、私は泣きたくなって、倉庫を出た。
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