第4話

「───か!わか!若っ!!」



『っ……獅子さん、病院は!?』



「車を用意しています。その前にお着替えを。」



獅子さんにクローゼットの前まで連れていかれ、獅子さんは着替え終わったら玄関に来るように言われた。



母は聞いたのだろうか……。



何があったんだろう……怖い。

震える手を握りしめて深呼吸を繰り返す。

まずは父の容態を見ないと!



適当に服を引っ張り出して着て外に出た。



「ん、紺ちゃん?顔真っ青やけどどうし……出掛けるん?」



『に、しき……』



錦は今バイト帰りなのだろう。

錦の問いかけに頷いて下を向くと、錦は「ん?」と首を傾げてしゃがむ。

私を下から見上げると、頭を撫でられる。



「紺ちゃん。」



『錦……』



「若!」



あ、行かないと。

今私なんて言おうとしたんだろう。



私の手は無意識に錦の服の袖を掴んでいて、乾いた口からは声が出ない。

体が冷えていく。



「よっこいせ!」



『っ!?ちょっ!!』



何を思ったのか、錦は私を担ぎ上げると歩き出す。

そうして、私を担いだままの錦は獅子さんが扉を開ける車の中へと体を滑らせる。



運転席には哲司がいて、助手席に獅子さん、後部座席に錦と私。



『錦、』



「紺ちゃん、辛い時は何も言わんと甘えて。」



『っ……』



「獅子さん、どないしたん?」



「黒斗さんが撃たれた。犯人は取り押さえられたみたいだが、容態が……」



『っ……』



知っている。

そういうお仕事なんだ。覚悟はしていた。

していたはずなのに。



怖い。自分が傷つけられるよりも怖い。



車の中で錦はずっと私の手を握ってくれていた。

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