第六章

ゴリラは笑わない

第1話

誰かの鈴が転がり、ぶつかって木霊する。

それは、初恋の音。



「キーホルダー、無くしたん?」



「ちゃうで。約束したんや。」



おかん、僕好きな子ができたんや。



もう届かない。

それでも伝えたい。



名前も知らない女の子。

繋いでくれた手が温かくて柔らかかった。



濡烏色の髪、新緑のような澄んだグリーンの猫目。

真っ直ぐ見つめてくるその瞳に一目惚れした。



自分と同い年くらいのその子が声をかけてくれただけで、凄く安心した。



「誰と約束したんや?」



「秘密。言ったらもう会えん気がすんねん。」



誰にも言わない。

おかんが好きな子ができたら、誰よりも先にその子に「好き」だと言いなさいと言っていた。



まだ慣れない大きな手が僕の頭を撫でる。



キーホルダー、なくさないといいな。

大事な宝物。

おかんが僕のために手作りしてくれた鈴音がするキーホルダー。



きっと、いつかきっと……巡り会えますように。






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