第156話
潮の香りがほのかにするこの場所で、1人の男が手を合わせてしゃがんでいる。
“彼”の目の前には、『仙道大稀』と書かれてある墓があった。
目を閉じて彼を想い、ゆっくりと目を開け立ち上がった時―――…一瞬だけ人の気配を感じた彼。
風が少しふいた。
この季節の風は彼にとって体に堪えるので嫌いだが、この潮の香りを運んでくれるのでここでの風はあまり嫌いじゃない。
……彼が好きだった、海の匂い。
「こんな所までついてきて、何の用だあ?砦。」
彼の後ろに控えていたのは砦で、墓の前で立ち尽くしているのは蘭勝。
あの遺書を読んでから、事あるごとに蘭勝は大稀を思い出してしまい―――…ここに来た所存である。
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