第540話

飲み物がなくなってしまった。


ドリンクバーを頼んだのだから、他にも何か飲みたいと思うけど………………


目の前の男を見る。


やはり邪魔なんだよなぁ。



「ん?何だ?俺はお前の相手にはならないぞ」



「馬鹿なこと言わないで」



「檜佐木か柚月か………………お前はどちらもいるんだな。表と裏に」



「その言い方は気に入らない」



「怒ったか?」



は〜ぁ、この男は私を怒らせたいのか?


真理亜が断ったのは私の所為ではない。


八つ当たりをしないでほしい。


ピコンピコンと私のスマホがなった。


画面をタップすると亜紀から何か送られてきたらしい。


確認すると良い具合に焼かれた美味しそうな分厚い肉の写真だ。


なるほど、これは確かに争う価値はあるかもしれない。


少量かと思ったらちゃんとした肉なのね。



「何だ?楽しそうだな」



「亜紀からバーベキューの肉の写真が送られてきた」



「はぁ?肉?」



「組織内でバーベキューをしたらしい。武器持ち込みのバーベキュー。高級肉の奪い合い」



「おかしな組織だな。お遊びしてる暇があるのか、アイツ」



「親睦会みたいなものでしょう」



「親睦会………………楽しそうな輩だな」



「そうね。亜紀はジュンさんに砂を掛けたらしい」



「怖いもの知らずだな。アイツらしい」



ピコンピコンと何度も鳴る私のスマホ。


どれも亜紀からのものだ。


【おい、返信しろ。何だ?風呂か?風呂なのか?なら、風呂に入ってる写真くれ】


既読は付くのに返信しないから、返信しろとうるさい。


最後の写真は無視をするべきだな。


『今、目の前に風間がいる』


【風間がいるのか?つーか、どこにいるんだよ】


『ファミレス。高速バスの時間まで待ってる時に風間が来た』


【ファミレスに風間が来たのか?高級レストランばかりの奴が?】


『大学の女と一緒に船上パーティーに行ったらしい。その帰りに寄ったみたい』


【帰りにファミレスか。あぁ、価値がないからいつも行く店に連れて行かないよな】


『だからって、私がいるファミレスに来てほしくなかった』


【スピーカーにできるか?】


『できる』


そう打つとすぐ電話が掛かってきた。


通話をタップしてスピーカーにする。



【おい、風間!お前、邪魔だ!】



「邪魔とは失礼だな。そっちは楽しそうなことをしているそうじゃないか。何をしに行ったのか………………遊びに行ったのか?」



【バーベキューのこと聞いたのか?遊びで武器持ち込みOKとかアホだろ。鉄パイプで殴り合いなんてもんじゃない。ボロボロになりながら肉を食うとかめちゃくちゃ嫌だろ】



「楽しそうだな。こっちは、断られて落ち込んでいるんだ」



【そうか、それは良かったな】



う〜ん。


この会話は聞かれてもいいのだろうか?


風間の隣にいる女に聞かれても………………よくはないよね。



「檜佐木は船上パーティーに呼ばれないだろうな。良いものだぞ。美しいものが見られる」



【相手が残念だよな。その辺にいた女を誘ったんだろ?そのまま勘違いされて責任をとればいい】



「同じようなこと言うのかよ。そこは似なくていいだろ」



【もう、お前帰れよ。邪魔なんだよ】



「夕食がまだだからファミレスに来たんだ」



【場所が違う。品格がいいレストランに行けよ。女と一緒に】



「品格がいい店にこの女を連れて行けるわけがないだろ。俺の立場に気にしろ」



………………。


チラッと女を見るとプルプルと震えていた。


馬鹿にされているのに気づいたのか、亜紀の話を聞いて怒ったのか分からないけど嬉しいものではない。



「今度は庶民的な食べ放題にでも誘ってみるか。それなら来るだろう」



【いや、無理じゃね?本人が嫌がるってこともあるが、周りに騎士たちがいるからな。そいつらが許さない】



「本人が来たいと言えばいい」



【こえーよ。それは洒落にならん】



は〜ぁ、風間は隣にいる女のこと忘れてないよね?


風間の服を何度も引っ張っているけど無反応だ。


………………よし、飲み物でも貰いに行くか。


私はドリンクバーに行くために席から立ち上がった。

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