第30話 俺は今日、生きて帰れるのだろうか?

「うおおおおおっ!」

「海だああああっ!」

「リア充爆発しろおおおおおっ!」


 海岸線に向かって駆けて行く斎藤、白石、杉田の3人組。


 ホント、あいつらテンション高いな。


 俺はと言うと、パラソルやら荷物を持って彼らについて行ってるところ。


 今日は臨海学校最終日。自由行動の日である。


 朝、クラスごとにミーティングがあり、ナナ先生から「あまり羽目を外すなよ」という注意があったが、あいつら、ちゃんと聞いてたんだろうな。


 ナナ先生の目はお前らを見てたんだぞ。あ、俺もか。


 自由行動だから別に事前の班決めに従う必要も無い。

 だが、まあ、別行動する積極的な理由も無かったし、「高科について行けば美味しい思いが出来そうだ」という謎の言葉と共にくっついて来た彼らを振り払いもしなかったというのが実情である。


 まあ、後で梨沙姉が合流してくるだろうが、その時はその時だ。


 砂浜にレジャーシートを張ってパラソルを立てる。

 寝ころべるデッキチェアみたいなのは流石に無いけど、小さな折り畳み椅子を借りてきたので、その安っぽいビニールの座面に座って周りを見渡す。


 海水浴場はかなりの人出。


 当然、研修所と違い、ここは貸し切りでは無い。一般の海水浴客も来ている。


 まだ午前中の早い時間だし、世間的には平日だから親子連れとかの姿が無いのが救いだが、昼近くになったら相当混むだろう。


 そう思いながら周りを見回していたら、後ろから声をかけられた。


「「「高科くーん、おはよう!」」」


 見ると、夏月と同室の女子達だ。夏月もいる。


「おはよう」


「ねえ、隣にシート引いていい?」


「もちろん」


 彼女たちの設営を手伝い、パラソルを立てる。

 その日陰に入ると、みんな嬉々としてラッシュガードを脱ぎ始めた。


 俺達もそうだが、研修所で水着に着替えたうえで、ラッシュガードを羽織ってここまで来たのである。


 脱いでいるところをまじまじと見るのもどうかと思うが、つい視線が向いてしまう。


 夏月は黒のフリルビキニ。

 梨沙姉が最初に試着していたのと良く似たデザインだが、色が違う。


 その適度に露出しつつ、清楚なデザインが夏月のイメージに良く似合っている。

 何より、夏月のすらりとしたスタイルにこの上なく映えていた。


「高科君、そんなじろじろ見られると恥ずかしいんだけど」


 視線に気づいたらしい夏月が自分の身体を隠すように腕で抱え、恥ずかしそうに睨んで来る。


「ご、ごめん。凄く似合ってるから、つい」

「!!」


 更に真っ赤になってしまった夏月を他の三人がニヤニヤ眺めて──


「尊い!」

「萌える!」

「了×夏いただきました!」


 ……何言ってるんだよ、お前ら。


 その三人娘は、これまた可愛い水着姿。


 相澤さんはセパレートタイプのスカート水着。

 ビスチェタイプのトップスが紺に花柄、スカートが黒というスタイルである。


 上原さんと江川さんはワンピースタイプのスカート水着だった。色はそれぞれ青とピンク。


「ねえ、高科君もラッシュガード脱いだら?」


 そう言われて気付いた。俺まだラッシュガード着たままだったな。

 無造作にラッシュガードを脱ぐと、シートに放り投げる。


 と、女子達を見ると、何か目をキラキラとさせている。夏月だけ目を逸らしているけど耳が赤い。


「筋肉……」

「かっこいい」

「腹筋割れてるー」


 まあ、梨沙姉とのトレーニングで筋トレもさせられてるからな。もう4か月経って、だいぶ仕上がって来てる。別にムキムキでは無いけど、細マッチョというくらいには。


 彼女たちはさらに近づいてきて──


「「「触ってみていい?」」」

「ダメに決まってるだろ!」


 焦って距離を取る。「ええー」とかいう声が聞こえるが、当たり前だろ。何考えてんだ。


「でも、そうかあ、この筋肉で彩名さんをお姫様抱っこしたんだ」

「うんうん、あれは凄かったもんね」

「私もお姫様抱っこされてみたい!」


「いや、あれは火事場の馬鹿力みたいなもんだから。それに夏月は軽かったから」


 変な方向に話が行きそうなので、過剰な話は抑えようと思ったのだが、逆に彼女たちが目を輝かせ始めた。


「なんで彩名さんが軽いって知ってる?」

「比較対象が無いとわからないよね」

「ズバリ、他にもお姫様抱っこした人がいると見たね!」


 何でこいつら、こういう時だけ鋭いんだよ……


「そんなこと無いって。相対評価じゃ無くて絶対評価だよ。夏月スタイルいいからさ。軽いんだよ」


「「「……だそうです。どうですか、彩名さん⁉」」」


 これまで俺をいじっていた彼女たちの矛先が夏月に向いた。その夏月は、頭からプスプスと湯気を出しそうなほど真っ赤になって座り込んでいた。


「「「いやあ、尊い!」」」





 そうこうしているうちに、海に飛び込んでいた男どもも戻って来た。

 戻ってくるなり、口々に──


「計画通り!」

「高科、グッジョブ!」

「リア充最高だな!」


 ……お前ら……


 一方、女子達からは早速男子たちにお小言。


「男子たち、今日はエロ禁止だかんね!」

「ちょっとでもエロい目向けたら殺す!」

「ナナ先生に言いつけるからね!」


「「「はい……」」」


 ……うん、まあ、その、なんだ、頑張れ。


 斎藤たちを生温かい目で見ていたら、女子3人組がこちらを見た。


「ナナ先生と言えば、こないだは大丈夫だったの?」


「ああ、あれ? なんか最近どうだ?とか、友達は増えたか?とか聞かれただけだったよ。何だったんだろうな、あれ?」


「「「ええ、それだけ?」」」


 いや、それだけ?って、それ以外に何があるんだ?


「旅先で美しい女教師から部屋に呼ばれた少年」

「部屋までやって来た少年に女教師は妖艶な笑みを浮かべるの」

「そして始まる教師と生徒の、禁断の年の差愛!」

「「「キャーッ!」」」


 ……何考えてるんだ、お前ら。そう、思っていたら──


「ほう、面白い話をしているな、お前ら」


 振り向くと、そこには──


「「「ナナ先生!」」」


 噂の相手が立っていた。

 その相手に女子3人組は──


「「「ナナ先生、かっこいい!」」」


 ナナ先生は身体の前の方で布地がクロスする形のワンピース水着にパレオを纏った姿。つばの広い麦わら帽子にサングラス。


 スタイルの良さと相まって、大人の妖艶さを醸し出す水着姿。

 女子達が言い訳も忘れて見惚れてしまったのも無理は無いだろう。


「下らんことを言ってないで、自分たちの青春を楽しめ」


 先生はニヤリと笑うと行ってしまった。うーん、かっこいい。





 何となくみんなが毒気を抜かれてお互いを見渡した、その時、周囲がざわつきだした。


「おい、あれ!」とか、「凄い!」とか、果ては「俺、もう死んでもいい!」とか言う声が聞こえてくる。そのざわめきを上書きするような声。


「あ、了君見っけー!」


 ちょうど梨沙姉がラッシュガードを脱ぎながら向かってくるところだった。隣には片瀬先輩。


 梨沙姉はこの前、一緒に買ったクロスホルターネックビキニ。


 お店で既に見ているけど、こうして海岸で陽光の下歩いているのを見ると、更に印象が強い。


 まるでランウェイを歩くモデルのような。

 周り中の人達の視線が吸い寄せられていた。


 そして片瀬先輩。


 胸からデコルテを覆うハイネックタイプのセパレート水着。トップスは水色に白の水玉。ボトムスは黒。


 大人びた印象の片瀬先輩にこの上なく似合っている。


 二人の美女は真っすぐ俺の方に来ると、まず梨沙姉が──


「了君、イェイッ!」


 ハイタッチして来た。続いて片瀬先輩まで──


「イェイッ!」


 ハイタッチしてくる。


 周り中から突き刺さる殺意の眼差し。

 怖ええっ!と思って、視線から逃れようと横を向いたら、夏月と目が合った。


(お、怒ってる?)


 夏月がじろっと睨んでる。


 ……俺は今日、生きて帰れるのだろうか?



========

<後書き>

次回、引き続き水着回。

1月27日(月)20:00頃更新。

第31話「人生最大の危機?」。お楽しみに

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