第21話 パ〇ツじゃ無いから恥ずかしくないもん

 体育祭の参加競技を決めた翌週月曜日。


 昼休み、俺と夏月は神崎さんを伴ってグラウンドに来ていた。二人三脚の練習をするためである。


 夏月も背が低いわけでは無いが、それでも俺の方が15センチほど身長が高い。リーチの差もある。事前に合わせておかないと、本番で盛大にすっころぶなんて事態になりかねない。


 そう言う訳で、昼食を取った後、練習にやって来たわけだ。ちなみに神崎さんは面白がってついて来た。拓海は部室に行かないといけないらしく、別行動。


 グラウンドを見渡すと、俺達のような練習をしている人たちがチラホラと見受けられる。遠くではナナ先生の指導の下、応援団が練習していた。体育教師でも無いのに駆り出されるナナ先生も大変だな。


 そう言えば、詳しく聞いたところ、応援団は戦隊ヒーローもののコスプレをするらしい。赤、白、青、緑というチームカラーに合わせたヒーローが、悪の組織と戦って、愛と友情の大切さを謳い上げるという寸劇仕立ての応援合戦をやるとのこと。


 しかし、赤、白、青、緑だと4人しかいないけど大丈夫なのだろうか。まあ最近は5人組でない戦隊ものもあるらしいから、問題は無いのだろうけど、戦隊もの=5人組と言う先入観があってちょっとした違和感。


 なお、我らが赤組のヒーロー、ムラクモレッドをやるのは、あの生徒会長らしい。暑苦しい応援合戦が繰り広げられそうである。





 さて、そんな人たちに混じって練習を始める。

 まず、何はともあれ、足を結ばないといけないよな。


 着替える時間なんか無いから、俺も夏月も制服の上着を脱いだだけ。

 つまり夏月はスカートのままだ。


 生足に触れるのは少し気恥ずかしいが、練習のためだと自分に言い訳をして足に手を回す。


「ひゃあっ!」


 頓狂な声とともに、足を引っ込められてしまった。これはくすぐったかったか?


「ごめん」


「だ、大丈夫」


 なぜか真っ赤になってる夏月に、もう一度足を出すよう促して紐を結ぶ。「んー」とかいう押し殺した声が聞こえるが、我慢してくれ。くすぐったがっていると練習が始められない。


 よし、足は結べた。

 さて、走るためには身体を密着させないといけない。夏月の肩に手を回す。


「うひゃあっ!」

「うぉっ!」


 思い切り身を引かれた。その勢いで倒れそうになって慌てて踏ん張る。


 いや、幼馴染とは言え、男に肩を抱かれたら嫌かもしれないけど、密着させないと逆に危ないだろ。


「夏月、申し訳ないけど、身体を密着させないとうまく走れない。俺は肩に手を回すから、夏月は俺の腰に手をまわしてくれ」


「わ、わかった」


 恐る恐る腰に手を回されたことを確認して、夏月に改めて指示を出す。


「よし、それじゃ俺が号令を出すから。1、2、1、2で行こう。1で結ばれてない方の足、2で結ばれてる方の足を出すんだ」


「わ、わかった」


 ……本当に大丈夫だろうな?


 まあいい。それじゃ取りあえず走って見よう。


「よし、行くぞ。1、どぅあっ!」


 逆の足を出されて、思い切りこけてしまった。


 やばい!

 地面が迫って来る。横には同様に倒れていく夏月。


 人間、危機に瀕すると周りがスローモーションに見えるらしいが、まさにそんな感じだろうか。

 このままじゃ夏月が地面に叩きつけられてしまう。


 俺は咄嗟に夏月を抱きかかえた。

 そのまま地面に激突する。


「いってぇえええ!」


 背中から思い切りいってしまった。

 すげえ痛い。


 だが、そんなことより──夏月は大丈夫か?


「夏月、大丈夫か?」

「……」


 夏月は俺の腕の中で、硬直していた。返事もできないらしい。

 いきなり倒れこんだんだ。驚いて声が出ないのも無理無いよな。


 その顔がぎこちなく俺の方を向いて、見る見るうちに真っ赤に染まった。

 おい、大丈夫か?


「……ねえ、お二人さん、いつまで抱き合ってんの?」


 そこに掛けられる声。

 神崎さんがしゃがんで俺達を覗き込んでいた。


 ……え、抱き合って?

 あ、やば! 倒れた時に抱きかかえたから、抱き合ったように見えてる?


 ──と思ったところで、もう一つ、見えてはいけないものが視界に入ってることに気づいた。

 地面に倒れてる俺達の目の前に、短いスカートで無造作にしゃがみこんでいる神崎さん。つまり──


「美奈! パンツ、パンツ見えてるから!」


 夏月の悲鳴が響く。だが、神崎さんの方は不思議そうな顔して首を傾げているだけだ。


「パンツ?」


 いや、思い切り見えてるじゃねーかと思いつつ、視線を逸らして夏月と二人、何とか立ち上がる。

 それに合わせて立ち上がった神崎さん、しばらく首を傾げていたが、何かを思いついたようにポンッと手を打った。


 ──かと思うとニヤニヤ笑いながらスカートをたくし上げる。


「な、何してるんだよ!」

「何してるのよ、美奈!」


「じゃーん、パンツじゃ無くて陸上のユニフォームでしたぁ!」


「「は?」」


「着替えるのめんどいから制服の下にユニフォーム着てきたんだよね」


 はあ? 陸上のユニフォーム?

 ホッとすると同時に、ちょっと残念な思いも……


 そんな俺の想いを見越したように、神崎さんが笑いかけてきた。


「なに、高科君。ちょっとエロい気分になっちゃった?」


「うるせえよ」


「ふふん。じゃあ100円」


「は?」


「見物料」


 おい、金取るのかよ。


 俺の隣では夏月が真っ赤になって怒ってる。


「ちょっと美奈! まさかあんたお金取って男子に見せてるんじゃないでしょうね!」


「そんな訳無いじゃん。高科君になら、まあ、いいかなって。ダメ?」

「ダメに決まってるでしょ!」


 本当にお前ら、何言い合いしてんだよ……


 その後、気を取り直して練習に戻り、何とかまともに走れるようになったのだった。


 ちなみに神崎さんにはきっちりジュースを奢らされた。やっぱり対価を取るのかよ……



========

<後書き>

今年も1年ありがとうございました。

もしよろしければ☆レビュー、フォロー等いただけますと励みになります。

明日1月1日は本編とお正月番外編の2本更新予定です。

18:00頃 お正月番外編 「幸せは既にそこに在る」

20:00頃 第22話 「俺に任せろ!」

来年もよろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る