BADNESS

リル

prologue

“パパとママが若くて良いね”



幼い頃から、そんな言葉を幾度となく聞いてきた。


そんな若い親が、自分の自慢でもあった。

周りにうらやましがられ、それが優越感へと変わっていった。



小学校に入った頃、親の部屋で見つけた一枚の写真。



今よりも、若い両親の姿があった。



同じような服に身を包み、男達が肩を並べ、旗を掲げる。その横に、女達が寄り添っていた。



それを見た時、こんな世界があったんだと思った。


…こんな風に、笑う人達が居るんだと思った。


…こんな風に、格好良い時代があったんだと思った。



いつしか、そこに写る時代に憧れを抱いた。



こんな風に、格好良く生きたいと…

親が歩んだ道を、進んでみたいと思った。



そうすれば、自分もあんな風に笑う事ができる。


あんな風に…




——どんな時代にも…行き先が解らず、さ迷う者が居る。



何もないこんな場所で、何に縛られている訳でもなく…ただ、自由を求めた。



確な物を手にしたくて…

だけど、何が欲しいのかは不確かで…



“自由”


と言う、縛られない世界…そんな漠然とした物に、憧れを感じた。



何一つ、与えられていないと思っていたのだから…



いつの時代も、そうして悩み、あがき苦しむ者が居る。



そんな時代に…堅い絆で結ばれ、友と共に笑い、共に助け合い、仲間を愛した…



…そんな奴らが、確に居たんだ。

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