第3話

「郁美が本気なら、誰か紹介しようか?」



そう言いながら、さっきより数倍楽しそうな直美に顔をしかめる。



「なに、張り切ってんのよ」



「そりゃ、張り切るでしょ。やっと郁美が男作る気になったんだから!」



「……」



「紹介していい?」



張り切られると尻込みする。



「やっぱ、いいや」



「なんでよー」



間髪入れずに少し大きくなった直美の声が店内に響き、近くの席にいたサラリーマンの視線を集めた。



直美が続ける。



「いや、マジ、そろそろ男作った方がいいって!どれくらいいないんだっけ?2年?」



「…3年」




「そんだけいなきゃ、蜘蛛の巣張るよ…」



「下ネタはやめてくださいー」




呆れた顔をして直美が溜息を吐いた。



あたしもため息をつきたくなる。



たしかにはじめのころは単純に男性不振に陥っていた。

けど今は、その頃の傷は癒えていることは自覚してる。



ただ単に、めんどくさいのだ。



好きになれるかもわからない異性と遊んだりするのが。




けれども、

その考えを改め、一歩前に踏み出す時期が来たのかもしれない。




私はテーブルに突っ伏して瞳を閉じた。




「直美」



「何?」




「今度そういう話があったら声かけて」




自分の腕に顔を埋める私の耳に、「了解」と笑った直美の声が届いた。

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