第149話

「……ライ」

 陽射しを避けるために馬車に乗っていたが、突如兄が厳しい口調で言う。

「お前、戻れ。風成で」

「兄様……?」


 魔力が無くなって、その分殺気に敏感になった。

 魔国から引き上げて暗殺未遂に遭うことは格段に減ったが、ないわけではない。

「いつものことだよ。

 終わったら鳥を飛ばす」

「嫌です!」


 自身は魔国の【最後の当事者】だと思っている弟は首を縦に振らない。

「僕がお守りします!」

 言うや否や、近衛騎士に指示を出し始めた。


 昔は丁鳩がすることだと思っていたようだが、こうして自分で指示をするようになった辺り、成長したと思う。

「分かった。ただ、絶対に俺に魔力使うな。いいな?」

「…………」

 無言で兄を見詰め、

「僕の髪、持っていますね?」

 答えずに逆に質問を返す。

「持ってるよ。うるせぇし」

「うるさいって何ですか……」


「ほら、もう来たぞ。

 けっこう大所帯だな……」



◆◇◆◇◆

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