第24話
「しゅ、宿題は終わったので、先に部屋に戻ります」
「……もう部屋に行くのか?」
うっ、何その目は!
別に無視してもいいはずだ。いいはずなんだけど、どうも見捨てられてしまった子犬のような目で見つめられてしまっては、流石の私も無視できない。ああ、冷徹で氷のような女だったらよかったのに。私の馬鹿。
「あ、でもちょっとテレビでも見ていこうかなぁ、……なぁんて」
「じゃあ、お兄ちゃんと見よう!」
ーーー…ああ、後ろで乱さんのついているはずもない尻尾が嬉しそうに振られているのが見えた気がした。
そして、兄妹で何故かテレビを見ることになって数十分。
『美香、愛してる!』
『私もよ!』
この時間は確かにドラマをしている。でもさ、ドラマでもね、もっとマシなものはなかったの?キザな恋愛ドラマを見るはめになったのはまだよかったにしても、こんなクサイ台詞を聞かされる身にもなってほしいというか、それよりも兄妹でこんなキスシーンを見ることになるこっちの身にもなってほしいというか。
……お願いだから、この空気を気まずくさせないでえええ!!!
どうするの!?この後、どうするのさ!!ねえ!!
そして案の定、キスシーンが終わったら次回予告になってしまい、ドラマは終了する。
どうしろというのだ、私に。この空気をどうしろと。
「…………」
「…………」
一同、無言。
流石の乱さんもこれに対しては気まずさを感じているらしい。空気を読めない乱さんでもこの空気は読めるのね。ここで安心するのもおかしいが、少し安堵した私は早くここから抜け出してしまおうと口を開こうと息を吸ったが、先に乱さんが口火を切った。
「スズ」
「何でしょう、か?」
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