第21話

彼のことはよく分からない。でもまあ、視線が外されたことには安心して息を吐くが、目の前で無表情でこちらを見下ろしている乱さんを見て―――…やっぱり、げんなりした。君はいつまでそこにいるの?




「スズ、俺と2人って聞いてそんなに嬉しそうな顔して」



してねえよ、そんな顔。君にはこの顔が嬉しそうに見えるんですか?君の目はどこについてるの?おかしいの?ん?



しかし、彼はその勘違いをどんどんとエスカレートさせていく。




「俺のこと、そんなに好きなんだな」



いや、だから好きじゃねえし!



……まあ、言えないけどさ。好きじゃないとか言ったら、多分私はこの夕陽が沈む光景を二度と見れないことだろう。それだけは阻止しなければ。




「あ、あの乱さん」



「俺もスズのこと、大好きだ!」



だから、何の告白だよ!私の話、ちょっとは聞けよ!!



この状況をゲラゲラと笑っているのは、タダアイ。お腹を抱えて笑っているくらいだ。相当、ツボなのだろう。




「2人共、面白いね。いい兄妹だなぁ」



「だろ!俺達、相思相愛ラブラブ兄妹だ!」



「……それ、思ってんのお前だけだと思うぞ。轟」



的確な突っ込みをどうもありがとうございます、バンドウアオ。その感謝を伝えたいところなのだけど、前に立ちはだかっているこの男に遮られて無理そうです。




完全に部活動を邪魔されている私に乱さんは表情に色を付けないまま、ゆっくりと顔を近づけてきた。



轟乱の取扱説明3

『お兄ちゃんには甘えるべし』




「スズ、大好きなお兄ちゃんにはいつでも甘えていいんだぞ」



「……け、結構で御座います」



頼れないんだから、甘えるなんて以っての他です。

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