第17話

バンドウアオの言葉に乱さんは一瞬固まって、棒読みに答える。




「オレダッテ、ジュギョウクライデル」



「嘘丸出しだな」



「というか、乱って嘘下手だよね」



2人に責められている乱さんを見て、何だか少しだけ肩の力が抜けた気がした。今までは乱さんの印象は最悪だった。冷淡、横暴といった言葉がお似合いだった彼の見方が変わったからかもしれない。



意外だった。こんなふうに誰かと話している姿が可愛いだなんて。



じっと見つめている私に気付いたのか、乱さんは無表情のまま私の肩を掴む。……それには流石に驚いて、肩を震わせてしまったけど。




「スズ、困ったことがあればいつでも俺に相談しろ」



「え?」



「クラスのケバ女達にいじめられてないか?勉強はついていけているか?俺が足りなくないか?」



「何か、最後の余計じゃない?」



「黙ってろ、和」



「はいはい」



えっと、これは心配してくれているのか?まさか、あの乱さんが?



彼のことをまだよく知らない私はやっぱり意外で、彼に見惚れる。綺麗な顔、そして瞳。吸い込まれそうなほど澄んでいる目からは私を気遣ってくれていることが伺えた。



ああ、優しいな………と、思う反面。



「スズ、困ったことがあればいつでも相談しろ」



「………」



そんなことできるかと心の中で叫んでもいた。大体、こんな恐ろしい男に相談したら、倍返しどころか100倍返しで相手死んじゃうでしょ。







轟乱の取扱説明2

『お兄ちゃんに頼るべし』




「スズ、いつでも俺を頼れ」



「……間に合っております」



こんなお兄ちゃん、頼りたくありません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る