第12話

「……えっと、誰かな?」



「あー…、そういえば、アンタってそういうの疎いよね」



クラスのみんなの名前を覚えるだけで精一杯だ。それに入学してまだ1ヶ月も経っていない。乱さんのことだって覚えたのは奇跡に近い。




―――…いや、彼のことは自然と覚えたよ。近づいたらカツアゲされるとか、殴られるとか、もしくは気に入られたらヤられるとか聞いてたから、一番に覚えた。





気に入られたら、ヤられ………そうして、はっと気づいた。




「わ、私…っ、もしかしてヤられ…っ!?」



「風鈴?」



「あ、ううん。何でもない」



危ない。もうすぐで彼との関係を吐露しなければならない出来事が起きようとしていた。落ち着きなさい、風鈴。




「それで?あの黒髪の人は誰?」



「指差さない」



『目、つけられたらどうするの?』と注意されてしまった。そうね。ただでさえ乱さんの妹になってしまったのだ。他の奴らにまで目をつけられたら心臓がもたない。命がいくつあっても足りないよ。




「黒髪の怖そうな彼はこの高校のNo.2の3年伴藤 葱(バンドウ アオ)。ここの元トップだったらしいけど、轟乱が入学してからは彼の元についたって噂だよ」



「バンドウアオ。……絶対に近づかないリストに入れとくね」



「まあ、彼は一般生徒にはあんまり手は出さないらしいから、そんなに警戒しなくても大丈夫だと思うけど」



「顔も合わせないようにする!」



「……何か、風鈴、大丈夫?」

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