開幕

第1話

かつて、鎌倉時代に神と崇められていた存在は時を経るごとに尊重されなくなっていった。




 現代では暗がりに息をひそめ、夜に影を徘徊して回る。


 それらが本当に世の中に存在しているということを人間たちが忘れてしまってはや数百年。




 平成を迎えて以降、ほんの僅かにその存在と関わりあってきた人間たちの一部からそれら更に蔑ないがしろにされた。




 触れなければ、危害を加えなければ、その神々は気まぐれに幸せをもたらしてきた。




 けれども、無闇に嫌悪しそれらを厭いとう人間が増えれば増える程に――迫害され続け、禍わざわいをもたらすようになる。




 一定期間潜伏し沈黙した、かつて神と呼ばれた存在達は、まるで溜まったものを吐き出すかのようにして、禍わざわいの行き先を悪戯に決めた。






 年間行方不明者数、約十万人。






 人知れず“消えた”人間の何割かは、それらに遭遇し跡形もなく消されている。




 存在を軽んじられるようになったそれら――“九十九神”によって。

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