第28話 君がいなくても過ぎる日々 その六

 文化祭初日、今日は学内の教師と生徒だけ、そのほぼ全員が料理コンテストで昼食を済ませる。

 参加チームは10チーム。

 3学年で12クラスの内10クラス参加と、いうことは!

 この学校の文化祭は、これがメイン、主体?

 此処は、料理学校か?と、突っ込みを入れたくもなると言うもの。

 言わないけど!

 学内全員の胃袋を満たすとなると、1チーム当たり50皿くらい作る事になる。

 数だけでも大変だが、一度に並べられる数は10皿まで皿の減り具合を見ながら調理する事になる。

 煮物とか佃煮みたいに、数をまとめて作りおけるなら楽だけど1度に5、6皿分しか調理出来ない私達は目が回るほど忙しくなった。

 基本の調理は私と結海が担当して、補助を寧子と西城君が担当、小歳君は料理出しと調理の指示出しを担当してくれた。

 全体を纏めて見てくれたのは、西城君で普段大人しいから、意外に思った。普段から明るい感じの小歳君は、そのまんまフレンドリーで話し易い感じだ。

「ちょっと、良いかな?住家さん、あのさっ、寧子ちゃんも結海も、住家さんのことガッコ呼びだよね!その、俺達も良いかな?」

「えっ、あぁ、今更だけど、クラスメイトだもんね、良いよ!でも、結海は、名前呼びなんだ?」 

「俺達、俺と小歳は、結海と同中なんだ」 

「はい、了解です」 

「それでさ実は、小歳が結海に片想いしてて、その協力してくんないかな?」 

「あっ、それで、私達に協力してくれたんだ!」

「それじゃあ、それとなく小歳君を褒めるとか?で良い?」 

「それで良いし、出来たら二人だけの時間、作ってあげるとか出来ないかな?」 

「告白の時間って、言うこと?」 

「そう、告白タイム!寧子ちゃんにも、お願いしてもらえないかな?」 

「大丈夫!まかせてください!西城君も小歳君の為に私達の手伝いしてくれたんだね!」「友情だね!でも、ありがとう」 

「それだけじゃ、ないんだけど......ガッコちゃんは、他校に彼氏がいるんだっけ?」 

「うぅん、彼氏じゃぁなくて片想い....かな」 

「へぇ〜、そいつ余裕こいてると盗られちっまうぞ〜ってね、こんな可愛い子!」 

「ふっふっ、ありがとう!(だっそうですよ、ミー君!)」




 文化祭2日目、今日は校外からの来客のある日だ。まぁ、校外と言ったって招待状がなければ来れないから、在校生の家族や友人達ばかりではあるが。

 とは言っても、やっぱり普段、見かけない制服や、服装の人達が校内に居るのはドキドキする。

 不安?とも、期待感?とも、なんかムズムズする感じ!

 まぁ、学校的には学業成果の発表、地域との交流と言う目標があるらしいけど、私達にはちょっとピンぼけな感じだ。

 そして、地域交流の目玉行事!

 料理コンテストの結果は?

 私達はカツオ部門の第二位!

 総合8位でした。

 評判は悪く無かったけど!5部門に10チーム参加だから。部門毎に優勝と準優勝しかなくてつまり部門準優勝はドベと言う事なのだ!

 残念!

 文化祭が終わり、後片付けを皆んなでした。

 大昔は、キャンプファイアー的なこともあったそうだが、今時は近所の苦情もあってできないって。担任の吉川先生が言っていた。

 それでも、沢山の生徒達が遅い時間まで残ってジュース飲んで、お菓子摘んだ。

 ほのぼの特別な日を、感じていた。 

 結局、小歳君と結海は皆んなの密かな協力の下で、お付き合いを始めることを決めた。

 私は、つい最近、失くしたばかりだから、次はいつになるのか?

 相手は決めているのに!

 いつ始まるかが分からない。

 焦る気持ちはないけれど、少しだけ寂しい。




 俺達の工業祭まで、あと4日のタイミングで毎週恒例の“音合わせ!”

 そのあと、いつもの“エミちゃんママの店”

毎日食しても飽きない、スコーンとミルクティーそして、貴いエミちゃんの微笑み!

 我々、心貧しき者どもに、厭うことなくその笑みを与え賜う。天使様!

 「ふっ〜ん、“Ride on ”ね、それなりっちゃ、それなりか、な!音乗っけて見ないと、なんともね〜」

「で、誰が?音のっけんの?」 

「一応、ノゾキヤローがメインで、俺と、一寸さんがヘルプ?」

「一応、俺が適当にメロ付けて歌って、録音して、後で皆んなで音拾って譜面ぽくする」 

「ぽくする、って何?やって見せなさいよ、此処で」

「「「オッケー」」」

「..........................................」

「なっ、感じ、」 

「まぁ、一応出来てるみたいね」 

「「「まあ!言っても俺達、エンジニアだから」」」 

「お馬鹿!意味が違ってるし。真っ当な意味でも、卵のままじゃん」  

「「「仰る、通り!」」」




「それで、“工業祭“は土曜日からだけど、カノミー呼べるのが、日曜日だけだから」

「俺達も、土曜日のステージは、無しだ」

「そう、あたしのいない、あんたらのバンドなんて、コーラの入って無い、空き瓶みたいなもんだから!」  

「「「何だよ、カノミー、ゲップの素かよ〜」」」  

「ち、違うわよ!こんな可愛いJK捕まえて、よくそんなこと言うわね、この減らず口!」

「口が減ったら、ゲップは何処から出るの?」

「「それ、言っちゃダメな奴!」」

「可愛い、振りしてもダメはダメだよ、一寸さん」 

「そうよ、あんたは、だけ可愛いんだから!」  

「カノミー!それ、やばい奴」 

「えっ、えっ、これダメナノ?......アッアァ〜、コ、殺してやる〜この変態!」 

「だって、言われるほどないよ、俺」

「「「顔、真っ赤だぜ、カノミー」」」

「これ、続けても受けね〜から、止め!」「「止めよーぜ」」

「ところで、一寸さん、詩人の魂は癒された?」 

「 癒されちゃったら、詩人じゃなくなる。元々俺は、詩人じゃないから、詩人の言葉に癒される中也の優しさに、癒されまくる!中也は、癒されなかっただろうに」  

「ダメだ、カイタロー!地雷踏んだ。中原中也、語り出したら止まんねーから」  

「エッ、一寸さん、心病み!」

「あっあ〜、目、ギラギラしてる!語り始めるぞ」

「「ごめん、カノミー、1時間、語り続けるよ!一寸法師」 

「私、帰っちゃダメ?」

「「「うん!ダメ!」」」





 

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