推されるより恋されたい!

橙こあら

推されるより恋されたい!

第1話 あたしは推しがいて今日も幸せ

「はぁ~……橙々実ととみ……。あんたは今日も、かわいいねぇ~っ!」

「あ、ありがとう紫頼しより……」


 あたしは今、大切で大好きな大親友に抱きついている。今日もかわいい橙々実。いつもかわいい橙々実……。スリスリ、クンクン……あっ! これは、さすがにな……。


「ごめんっ! ついやっちゃった……。あんたがかわい過ぎて……と言い訳をさせていただこうっ!」

「いいよ~、そんなぁ……わたしたちの仲じゃない……」

「何だ、今更ってか」

「まあ、それもあるよねぇ~」


 アッハッハッハッハッハッハッハ……。

 いつも決まって笑い合う、あたしたち二人。


「ああ橙々実、あんたは心が広いねぇ。顔良しスタイル良し性格良し! ダメなところが、一つもないっ!」

「いやぁ~。そんなこと……」

「さっすが我が推し! あんたは自慢の大親友だよ!」

「紫頼……」


 あたしの言葉にドキッとしてしまったのか……昔から奥ゆかしい橙々実は、どうやら戸惑っている。だが、そんなところも良い! こんなにもかわいいのに謙虚だなんて、さすが我が推し! 我が親友!


「照れんなって! あたしは本当のことしか言ってねーんだから! ハッハッハッ!」

「そ、そう……ありがと……」


 あたし……薩摩さつま紫頼は、幼いころから「かわいい女の子」が大好きだ。アイドルや女優などの芸能人、アニメやマンガそしてゲームなどに登場するキャラクター……。あたしが今まで好きになったヒロインは、何人いるのだろう。とにかく魅力的な女性は次元を問わず、あたしを夢中にさせるのだ。

 今あたしの側にいる、館花たちばな橙々実。この子も、あたしの推しだ。橙々実は初めて会ったときから、あたしの推しだった。つまり……あたしは橙々実に、一目惚れしてしまったってこと。


「はぁ~……いつものように、あんたが隣にいてくれて……あたしはマジで幸せ者だよ!」

「わたしも紫頼が側にいてくれて、いつも楽しいよ」

「いやぁ~……。こんなオタクなあたしが毎日のように隣にいて、悪いねぇ! マジでバチ当たんじゃねーかな、あたし」

「そんなことないよ……。わたしなんかより、紫頼の方がステキなのに……」

「おいおい、ステキだってぇ? あたしがぁ? それこそ、そんなことねーよぉ! ありがとな、気ぃ遣ってくれて!」

「わたし……気なんて遣っていないよ……」

「はいはいっ。あんたは本当に優しいねぇ~、橙々実……」

「……」


 あたしが背中をパンパンッと軽く叩くと……また照れたのか、黙ってしまった橙々実。あたしは真実を言っただけだが、それでもテレテレな橙々実は……。


「やっぱりかわいい!」


 あたしは、また推しに抱きついてしまった。今日は……いや今日も、朝から良い日だ!


 

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