265:爆発音を聞く
俺もすぐには動けないけど、なんとかして注意を分散させないと。背中の竹カゴを下ろす。さっきの転倒でボロボロに破れているが、そのおかげで簡易クッションになってくれたのかも。
中を漁る。体拭き用の布などを掻き分け、溶岩石と炎結晶を見つけた。俺が持っているのは各1つずつ。それを惜しむことなく、胴体と脚部の鎧に投げつけた。
――ゴン!
――カン
重い音と軽い音。やっぱ炎結晶の方は投げるだけ無駄だったか。
しかし、そこで。鎧の動きが変わった。別々に動いていた上半身と下半身が、合流するように互いに近づいていく。ニチカとフィニスは一瞬、呆気にとられたように固まったが、すぐに俺の方へ合流してくる。
「どうしたんだろう~~?」
「いきなり敵意が無くなっちまったぞ」
2人も首を傾げながら状況を見ているが、俺も答えようがない。予想外の動きだもんな。ていうか、なんか合体技を繰り出してくるとかだったら、相当マズイ。今のうちに逃げるべきか。
そんなことを考えている時だった。
「あ! 炎結晶を拾ったぞ!」
「これは~~目論見通りに~~いくかも~~」
鎧の上半身が腕を伸ばして炎結晶を拾い、そして……自身の中へとポイと放り込んだ。そこですかさず下半身が合体し、閉じ込めてしまう。冷却の玉と勘違いしてるようだ。知能が低いのか、視力が低いのかは分からないけど……とにかく願ったり叶ったりの状況になった。
「……」
「……」
10秒、20秒。鎧は動かない。こうしていると、甲冑が飾られてるようにしか見えない。美術館とかで見るヤツだな。
「あ。鎧が~~膨らんできてる~~」
フィニスが最初に気付いた。言われて、俺たちも注視。確かに膨張を始めているように見える。胸当ての部分がグッと前にせり出して来た。けど、これって……
「マ、マズイ! 通路まで退避するよ!」
2人の腕を掴んで、引っ張る。促されて彼女たちも走り出してくれた。
そして釣り堀のある空間から、分かれ道を越え、洞窟の本道へと戻った辺りで。
――バーン!!
凄まじい轟音。恐らく、ヤツが破裂したのだろう。
「危機一髪だった……」
2人はやはり「熱膨張からの爆発」という現象にもピンときてはいない様子だが。あの音と俺の反応を見れば、あそこに留まってたらヤバかったということは分かるようで、軽く顔を引きつらせていた。
「し、死んだの~~?」
「多分ね」
爆発までして生きていられたら、もうお手上げだ。ロスマリーに「やっぱ無理でした」と謝るしかない。
それから俺たちは丸々1分くらい待ってから、様子を見に釣り堀へと戻る。
そこには案の定、鎧の破片が散乱していた。胸当て部分と脚部は比較的キレイな状態で残っているのが救いだけど、これは……素材として機能するのかね。
「……」
背中のカゴからレシピ帳を取り出す。『氷の鎧』の欄を見ると、虹色の共鳴光。そして目の前の散乱している部品たちも同様に輝いていた。良かった、大丈夫らしい。
片っ端から拾い上げて、釜の中へ入れておく。あとは龍魚のウロコはあるから、氷結スライムの塊肉とやらがあれば完成なんだけど……これもまた龍魚先輩に聞くか。普通に考えたら、冷却の玉を取り込んだスライムだとは思うんだけど。確か以前に1つ取り込んだ個体は何も変化しなかったんだよな。
「さて、戻ろうか」
と、言いかけたところで。フィニスが通路とは別の方向を向いているのに気付いた。ん? 何かあるのか。
俺とニチカも彼女の視線の先を追いかけたところで、
「……石、か?」
変わった石を見つけた。青と黄の縞々模様をしている。壁の一部が崩れたおかげで、剥き出しになったっぽいが……
「キレイだね~~」
確かに宝石のように美しい。大きさはフィニスの片胸くらいあるので、かなり大きめで……ってこれは、もしかして。
「転移のヤツじゃねえのか?」
ニチカに先に言われてしまったが、恐らく正鵠だろう。ハリアンさんの地図にも確か、南東に1つ赤点があった気がするな。正確な位置までは流石に覚えてないから、写しを貰ってから改めて確認したいけど。
「転移って~~例の妖精郷のこと~~?」
そういや、フィニスは連れて行ったことないんだったか。
「おちんちんで飛ぶんだぜ? すげえだろ」
飛んでるワケではないよ。おちんちん自体に人を飛ばす能力は無いから。
「わ~~アタシもおちんちん見てみたいよ~~」
「アキラに頼んでみろよ。すぐ出すぜ」
「すぐは出さないよ。条件が整わないと出さないよ」
とんでもない誤解を受けてるな。
「条件って~~?」
「第三者が居ない場所で、覗きや盗聴の心配も無い場所」
「ここじゃねえか」
「出せるね~~!」
言われてみれば確かに。けど今はそんな場合じゃないから。
結局、2分くらいかけて説明し直して、おちんちんを出す時=妖精郷へ行く時ということで納得してもらった。そして今は妖精郷より「氷の鎧」完成を急いでいるのだと。
「なんだよ。あーしの時は家のベッドでビュルビュルしてたじゃねえかよ」
それを言われると弱いんだけどね。アレはアレでニチカと深い仲になるには必要だったけど、転移とは無関係な写生だったのも事実だよね。
「まあクリムゾンを倒したら、近いうちに連れて行くから」
この言質で勘弁してもらった。もちろんフィニスに写生を手伝ってもらえるんだから、俺としても楽しみだけど。
丸く収まったところで、俺たちは転移装置と思しき石はスルーして、龍魚の待つ地底湖へと戻るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます