37:シェレンさんのも見ちゃった
丘を下り、セイリュウ海域へと進む。海岸で行われるという泥パック。既に何人か疎らながら人が居た。顔や体に泥を塗って、大の字になっている様子だ。
「あそこだけ明るい。光石を使ってるのか」
「そうよ。アレはれっきときた商売だから、お客さんが利用しやすいように、光石を惜しまずに使ってるの」
なるほど。お金になるなら、設備投資もするよね。
徐々に近づいていくと、全容がハッキリしてくる。砂浜の一角を会場にしてるようで、その四隅に大きな光石を配置してるらしい。流石に昼のように明るいとまでは言えないけど、ナイトプールくらいの明度はありそうだ。まあ俺、そんなパリピスポット行ったことないから想像だけどね。
「あの大きさの光石って」
「大札30枚は下らないわ」
以前の推測通り、大木札1枚が1万円だとすると、30万円。なるほど、光石は小さな物でも高価という話だったが、あの大きさは30万か。
そして、その贅沢な照明に照らされた浜には、何人もの女性が泥まみれで寝転んでいた。全裸丸々を泥パックされてる人、顔だけパックで、あとは服を着ている人の2種類。ちなみに、全裸の人も、大事な部分まで灰色の泥に覆われているため、劣情を催したりはしない。まあそもそも、何故かモブの人の裸には変な気持ちは湧きにくいんだけどね。風景、背景みたいというか。
「ボクは今日は顔だけなんだよ」
「私は全身の日ね」
俺が観察してる間にも、話は進んでいく。
「なんか基準とかあるんですか?」
「単純に週1回……全身と顔を交互に、という風にしてるわ」
ああ、なるほど。
「本当は毎日でも全身したいのだけど」
「破産するんだよ!」
そんな元気一杯に言うことではないと思うよ。
まあでも、あんな高価な照明を使ってるくらいだから、客単価もお高いんだろうなとは想像つく。
「アキラ。アナタは初めてだし、全身しなさい」
……いや、ダメだ。素っ裸になってしまう。
泥パックってマスクのイメージしかなかったから、てっきり顔オンリーだと思ってたのに。こんな落とし穴があるとは。
「い、いえいえ。俺も顔だけで大丈夫です」
「遠慮してるの? 高いとは言ったけど、ロスマリーに貰った補助もあるのよ?」
遠慮だと思われてるっぽいな。
「あ、いえ。ちょっと初体験なので、怖いというか。今日は様子見で顔だけにしとこうかなと」
我ながら、これは上手い言い訳が出た。シェレンさんも納得したようで、なるほどと頷いてくれた。ただ、
「次は全身しましょうね」
とは言われてしまったが。まあ、そこは未来の自分が何とかするでしょ(現実逃避)。
「受付みたいな所があるんですね」
木のテーブルと椅子が、会場の外れの方にあるのを見つけた。モブ女性が座ってる。けどなんか……赤いシャツに、柄の入った青いスカートを履いていて。
「儲かってそうだなあ」
美容需要は、異世界でも健在ということか。男が居なくても、キレイでありたいという想いは女性の根源的な欲求なのかも知れない。
みんなで受付テーブルまで行くと、
「顔2、全身1でお願いね」
シェレンさんが代表して、そう告げる。お金(木札)もコトンと置いた。大が2枚だった。全身が大木札1枚(1万円)で、顔だけの2人合計で大1(つまり1人5千円)だろうな。
「例の異世界人ですか」
「え、ええ。でも大丈夫よ? 暴れたりしないわ。とっても良い子なの」
シェレンさんがそっと腕を組んでくる。爆乳が肘を包み込んで……日本ならこれだけで下手したら5千円くらい取られるレベル。
「まあ私は、お金さえ払ってくれて、問題を起こさないでくれるなら、異世界人だろうが動物だろうが、気にしませんが」
木札を回収しながら、受付女性はつまらなそうに言う。こういうビジネスライクな人も居るんだな、この島。
受付を済ませると、桶を渡された。泥が大量に入っている。
聞けば、セイリュウ海域の一等水が澄んだエリア、その海底にある泥を掬い上げてきた代物だとか。
素潜り&泥さらいの手間賃込みなら、むしろ良心的な値段かも知れないな。
「ボクがアキラの顔を塗るんだよ」
「私がポーラの顔を塗るわ」
ああ、そうか。鏡もないし、連れ合いにやってもらうこと前提の業態だな。
「じゃあアキラは私の体に塗ってちょうだい」
ん!? 俺がシェレンさんの体に?
「そ、そんなことして良いの?」
敬語に変換する前に口から飛び出していた。そんくらい、望外というか……泥パックに来たハズなのに、そんな素敵イベントが起こるなんて。
って! シェレンさんが止める間もなく、シャツを脱いでしまった。魅惑のお山の頂、ピンク色のキレイな……
「う」
さっきのフィニスの時といい、もう色々と限界が近い。自殺行為だと分かってるのに、どうやっても視線を逸らせない。ガン見だった。
エレザのは輪っかが比率として大きめで、ポーラのは普通だったが……シェレンさんのも……少し大きめか? いや、光石に照らされていても、夜の帳が下りる中では、よく見えない。
「……」
無言で近付いていた。いつ足を動かしたのかも覚えてないくらいには夢中だった。
手を伸ばす。触りたい、という欲求が抑えきれない。
と、そこで。急にシェレンさんが後ろを向いた。ああ、おっぱいが! 見えない、触れない。
「前は自分で塗れるから、アキラは後ろをお願いね」
な、なんと。そんな殺生な。
…………いや、マジで落ち着こう。シェレンさんの言う通りだ。こういうシチュで塗るのは背中がセオリーだろう。落ち着け、落ち着け。
「それじゃあお願いね」
砂浜に無造作に横たわったシェレンさん。プリッと張りのあるお尻が丸見えだった。
これはこれで……ヤバいな。
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