第15話
ハッチに空いた穴目掛けて、ヴァイは機首を突っ込んだ。
目の前には、待ち構えていたソルジャーたちがいて、まるで待ってましたと言わんばかりにマシンガンを浴びせてくる。
「マイコーみたいでかっこいいぜ!」
ヴァイは何世紀も前の伝説のライブ映像を思い出しながら、ニヤけた表情で呟いた。
彼はバルカン砲を撃ち続け、銃火の雨を浴びせる。
弾幕がソルジャーたちを襲い、彼らは驚きと混乱の中で反撃を試みるが、ヴァイの射撃は正確で容赦がなかった。機首を傾けながら、彼は次々とターゲットを排除していく。
周囲は爆発と銃声で満ち、混乱が広がる中、ヴァイの笑顔はさらに強くなった。自らの戦闘に対する高揚感が、彼をますます駆り立てていた。
全滅したソルジャーを前に、ヴァイとエリシアは悠々とスペースシップから降り立った。
周囲には静寂が広がり、散乱する死体が彼らの足元に転がっている。
ヴァイは周囲を見渡し、さっきのスペースシップはすでに脱出には使えないことを理解した。
エリシアは冷静な目で死体を観察し、必要なものを探し始めた。彼女は一体のソルジャーからマシンガンを手に取り、もう一つのマガジンも拾い上げた。
「これで少しは心強くなりますわね。」
エリシアは満足げに微笑み、マシンガンを構える。
「準備は整ったな。次のステージに行こうぜ。」
ヴァイも同意し、周囲の状況を確認しながら、次の行動に移る準備を進めた。二人の決意は揺るがず、さらなる冒険へと踏み出す準備が整った。
船の奥で、バイトは焦燥に駆られていた。
巨大な集合スクリーンには、あらゆる角度から映し出された全身シルバーの男——ヴァイの姿が映っている。モニター越しに、ヴァイの鋭い視線がバイトを射抜くように感じられ、彼の心拍数が上がる。
「コンパイルはまだか?」
バイトの声は冷たい焦りに満ちている。
「あと少し——」
オペレーターが答えるが、バイトの苛立ちは限界に達していた。
バイトは突然オペレーターを掴み上げ、力強く弾き飛ばすと、自身のポートをコンピューターに接続する。
画面には無数のコードが流れ始め、エラーメッセージが点滅している。
「もういい!並列でインストールする!」
彼は怒りに任せ、強引にシステムを操作し始めた。
「危険です!」
オペレーターが叫ぶが、バイトは一切無視して続ける。自らの命も顧みず、彼はアノマリーの完全な掌握を急いでいた。
管理者情報のコンパイルとインストールが同時に進行していた。
無数のモニターに表示されるクロック数、CPU温度、そしてEGSの負荷——すべてのゲージが異常なほど高く振り切っていた。
EGS(非常用電源システム)は船本体のエネルギー系統とは切り離されているため、直接的な影響はない。しかし、それでもシステムの負荷は限界に近づいていた。温度警告が点滅し、制御不能なエネルギーがコンソールから響き渡る。
「持つか……?」
バイトは焦りながらも冷静さを失わずに画面を見つめ、システムが崩壊するのを防ぐため、手元の操作を繰り返していた。画面に流れるエラーメッセージが増えていく中、彼の神経は張り詰めていた。
二人は入り組んだ船内を駆け抜ける。
狭い通路が続く中、ヴァイとエリシアは一瞬の躊躇もなく前進した。
閃光が走り、硝煙が充満する。
銃声が響き、弾丸が壁を削りながら飛び交うが、二人はそれを巧みに避け、瞬時に反撃を開始。ヴァイは正確な射撃で敵を撃ち、エリシアは迫る相手を殴り飛ばす。連携が見事に噛み合い、死線を掻い潜りながら進む。
「そっちだ!」
ヴァイが叫び、エリシアが応じる。
彼らはドアをぶち破り、次々と現れる敵を撃ち、殴りつけながら船内の深部へと突き進んでいく。その先に待つのは、さらに強大な敵か、それとも目的地か——二人の勢いは止まらなかった。
椅子に座り、インストール作業を続けるバイト。
モニターには進行状況が表示され、彼は全神経を集中させていた。だが、その瞬間——。
「ガはっ!ん゛っ!」
バイトの体が硬直した。
突然の激痛に、彼は身を捩る。
何かが、バイトの「なか」に流れ込んでいる——得体の知れない存在、電脳的なウイルスか、それともアノマリーの力そのものか。
「な……何だこれは……!」
彼の手は震え、意識が混濁する。コンピュータに接続されたままの彼は、自分が何かに支配されつつある感覚に襲われた。
視界が歪み、現実とデータが交錯する中、バイトはもがき苦しんだが、その正体を掴むことができなかった。
「か、鍵じゃ……ない、こいつは——!」
バイトは苦しみながら声を絞り出した。彼の目には恐怖と驚愕が浮かんでいる。自分が手にしているはずのアノマリーが、まったく異なる何かであることを理解した瞬間だった。
部下が慌ててバイトをコンピュータから引き剥がそうと駆け寄る。だが、その瞬間、バイトはものすごい力で振り解き、無意識に部下を弾き飛ばした。
「うっ……!」
部下は壁に叩きつけられ、痛みに顔を歪めた。バイトの身体は自らの意思とは異なる動きで震え、さらに何かが彼を支配していく。
エリシアとヴァイは船内の資材保管エリアに足を踏み入れた瞬間、ソルジャーたちと激しい交戦状態に突入した。
砕け散る照明が暗闇を断続的に照らし、閃光が瞬くたびに銃声が響き渡る。鼻腔をくすぐる硝煙の匂いが場を支配し、緊張感は最高潮に達していた。
ヴァイは物陰に身を潜め、素早くマガジンを入れ替える。彼の動作は冷静で正確だが、敵の攻撃は一瞬の猶予も許さない。
その間、エリシアが前に出た。手を掲げると、空気が一瞬冷たくなり、彼女の魔力が周囲を覆った。
「——ブリザード!」
彼女の声とともに、煌めくオーラが空間を満たし、冷気が勢いよく吹き荒れる。
氷の刃が舞い、触れた者の血液は瞬時に凍りつき、ソルジャーたちは息を飲む間もなく不可解な人形となって床に崩れ落ちていく。
その冷酷な光景の中、ヴァイはリロードを完了させ、次の一撃を放つ準備を整えた。
空中に放物線を描く何かが目に入った。
「手榴弾だ!」
ヴァイの直感が叫ぶ。
瞬時に行動し、エリシアを強引に押し退けた。彼女が驚いて振り返る間もなく、ヴァイは銃を構え、空中の手榴弾を狙い定める。
一発、乾いた銃声が響く。
手榴弾が破裂し、激しい爆風が木箱を粉砕。破片が周囲に飛び散り、木箱は一瞬にして木屑と化した。衝撃波が二人の耳をつんざき、目の前に木片が舞い上がる。
「大丈夫か?」
ヴァイが振り返りながら、エリシアに声をかける。
エリシアは怒りに満ちた表情でソルジャーたちを睨みつけると、突然、奇声を上げながら全力で突っ込んだ。
「ちょええェエえぇエエエ〜!」
彼女の突進に、ソルジャーたちは一瞬ひるむ。だがその一瞬が命取りだった。
「バカめ!」
ヴァイが叫びながら、マシンガンを構えて応戦。銃声が連続で響き、弾丸がソルジャーたちを襲う。
エリシアは目の前の敵に一瞬の隙も与えず、凶暴な勢いで突き進む。
鈍い音が響き、エリシアの圧倒的な力により、ソルジャーたちはまるで人形のように宙を舞った。
重力に引かれて地面に転がり落ちた彼らの首は、不自然な方向に曲がっていた。息をする間もなく、全員が無力化されていた。
ヴァイはマシンガンを構え、最後の一人を正確に撃ち抜く。ソルジャーが倒れると同時に、彼の目が何かを捉えた。
「——ヤツがいない!」
ヴァイは状況を把握し、顔を歪めて舌打ちする。
「くそ、あの
彼は怒りを抑えきれずに叫んだ。
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