第12話 新たな仲間と危機の前兆⑥

 翌日、村に再び外部からの訪問者が現れた。豪快な笑い声を響かせながら村に入ってきたのは、以前竜星が隣町で取引を結んだ商人ガルドだった。


 「よう、竜星!約束通り、商品を見に来たぞ!」

 ガルドは馬車から降り立つと、手を大きく振って竜星に歩み寄った。


 「ガルドさん、よく来てくれました。」

 竜星は笑顔で彼を迎えながら、同時にほっと胸を撫で下ろしていた。商人ガルドの来訪は、村にとって新たな流通の可能性を広げる重要な機会だった。


商品の査定


 竜星とガルドは納屋に移動し、村人たちが懸命に作り上げた商品を見て回った。乾燥スライムゼリー、防水布、ウルフの革製品など、多種多様な加工品が整然と並べられている。


 ガルドは商品を手に取り、じっくりと観察した。特にスライムゼリーの品質には感心した様子で、顔をほころばせる。

 「これはいいな。防水だけじゃなく、耐熱効果もありそうだ。こんな素材、町の連中ならいくらでも欲しがるだろう。」


 次にウルフの革製品を手に取ると、ガルドは少し顔をしかめた。

 「ただ、これについては改良の余地がある。裁断が少し粗いな。もっと丁寧に加工すれば高値がつく。」


 竜星は頷きながらメモを取った。

 「ありがとうございます。村人たちにすぐ伝えて改善させます。」


新たな提案


 商品を一通り見終えたガルドは、馬車から大きな布袋を取り出し、中から奇妙な道具を取り出した。金属の型板や精巧な刃物、加工用の工具が揃っている。


 「これは俺の商隊が使っている加工用の道具だ。お前たちがこれを使いこなせば、商品の質が格段に上がる。」

 「これを俺たちに?」

 「そうだ。ただし、貸し出しだ。売り上げが上がったら少しずつ代金を払え。それでいいなら使えよ。」


 竜星は感謝の表情を浮かべた。

 「ガルドさん、本当に助かります。」


 ガルドは大きく笑いながら、竜星の肩を叩いた。

 「俺が助けてるんじゃない。お前たちが商品を作れるからだ。それに、俺も儲けが欲しいからな!」


ギルドの情報


 取引を終えた後、ガルドが真剣な表情で竜星に話しかけてきた。

 「竜星、最近ギルドがあんたの村をしつこく調べているという噂を聞いた。」


 竜星の顔が険しくなる。

 「やはりそうか。昨日も査察官が来て、商品を提出しろと圧力をかけてきた。」


 「奴らが狙っているのは商品だけじゃないかもしれない。最近、ギルドの中で何か大きな動きがあるらしい。あんたの村がその渦中に巻き込まれている可能性が高い。」


 アリサがその話を聞いて割り込む。

 「大きな動きとは具体的に?」

 「はっきりとは分からない。ただ、ギルド内部の上層部がある計画を進めているという噂がある。それに、あの魔法陣のことも関係しているかもしれないな。」


 竜星はその言葉に深く頷いた。

 「分かった。ありがとう、ガルドさん。あなたの情報は貴重だ。」


次なる挑戦の準備


 その夜、竜星は村人たちを集め、ガルドの道具の使い方を教えながら、新たな製品の計画を説明した。村人たちは少しずつ自信を取り戻し、作業に熱意を持って取り組み始めた。


 一方で竜星は、アリサとともにギルドの次なる動きを警戒していた。魔法陣や結晶の謎、ギルドの内部計画――すべてが絡み合い、彼らに新たな試練を予感させていた。

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