自分の気持ち

 ねむい。今の自分の状態を表すならこの言葉に尽きる。美術の時に言っていた、梨久の愛について考えていたら朝になっていた。

 確かにあの時心が揺れ動くような機微を感じたはずなのだが。それについてずっと考えていると頭がおかしくなりそうだに。気分転換に外を歩こう。



 近所の公園から商店街など歩き回っているといかにも怪しそうな占い師の屋台? 的なものがあった。

 少し覗いてみると、中に誰もおらず。なんだ居ないのかと思っていると後ろから声をかけられ大袈裟すぎるほど驚いた。

「なんだい坊や」

「少し物珍しさで眺めていました」

 この占い師ぽい格好をしている女性は髪染めをしているのかあまり白髪は見られず、それでも年配者特有の貫禄を感じる。甘く見積もっても50代後半のように見える女性からしたら俺は坊やなんだろうな。

「まぁーいい、丁度私も暇でな。少し見てやるからここにかけな」

「では、お言葉に甘えて」

 机の上には水晶が置かれており、これを使うのだろうか? 使わなくても何が出てくるのか分からないのでワクワクしている自分がいる。

「水晶に手をかざしてごらん」

 水晶だった。言われた通りに手をかざしている間に心のハードルを今のうちに下げておくことにする。

「なるほどね、あんた面白いね」

「そうですか。ところで質問してもいいですか?」

「構わんよ」

「何を占って欲しいかとか聞かないんだなぁと」

「あぁ、そういう事か。それも含めて占っているんだよ」

 今俺の心のハードルは、ぶち上がり中です。楽しみだなぁ〜。

「友達について悩んでいるだろう」

「……」

 ズバリと言わんばかりに言い当てられ俺は言葉が出ない。

「それと関係性方面の悩みだね」

 心のハードルをぶち壊し、フィーバータイムに突入しそうなぐらいである。

「はい」

「あんたからの話が聞きたい。言ってみな」

 俺は言われた通りに最近のことを話した。

「やっぱり面白いねあんた。まず大前提にあんたはその子に気がある」

「え!?」

「じゃなきゃ、その子の愛についてなんてバカ真面目に考えてないよ」

「そう……なんでしょうか」

「聞き方を変えよう。その子についてどう思う。可愛いとかかっこいいとか」

「第一に可愛いですね。健気で頑張り屋で、それに一緒にいて心が温まるような気がするです」

「その心が温まることを恋慕って言い方をするじゃないかい」

 占い師さんの言った言葉はスっと胸に入って最後のパズルのピースが入ったように感じられた。

「なにかわかったようだね。さぁ帰った。帰った。こっからは別料金だよ」

「ありがとうございました」

 そうか俺は梨久に恋をしたんだ。

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