凌辱

 あちらこちらから叫び声が上がるのに満足しつつ、私は近くの家の扉を開けようとする。が、かんぬきで鍵がされているらしい。もっとも、それは無意味以外の何物でもない。バギリ、と扉を周囲の壁ごと破壊して中に入る。


「邪魔するわね」

「――ひ、ひぃっ!」


 中にいたのは中年の農婦と十二、三と思える少年が一人。


「ハズレね……」


 私はため息を吐いて一撃で二人を躯に変えると、また別の家に赴く。

 流石に外がこれだけ騒ぎになっていれば泥人形三体をお供にして強引に入ってくる私に恐怖を見せない人間はいなかった。

 地面にはいつくばり、あまりにも醜い命乞いをする初老にかかった男の頭を踏み潰す。

 慈悲を与えてくれと乞う老婆を蹴り飛ばして絶命させる。

 やけくそになって殴りかかってこようとする中年の男の身体に風穴を開ける。

 そんなこんなを数件繰り返してもなかなか当たりを引けなかった。逆に、私がのんびりとしすぎていたせいか、外での戦闘はあらかた終わり、泥人形がうかがいを立ててきた。もうちょっと時間がかかるかと思っていたのだけれど、いかんせん人間という種族が生ぬる過ぎたらしい。

 とりあえず隠れている連中でも男性や年をくった女性は殺して良いと指示を出し、若い子女だけを残すように言った。

 そして、もう一軒、と扉を蹴破ると、私と同い年程度に見える少女が幼い男の子二人をかばうようにピッチフォークを構えた。


「お、お姉ちゃん……」

「よ、寄るな! 化け物っ!!」


 あまり気が強そうな雰囲気ではない。けれど、弟らしい男の子二人を守ろうとその目に必死に力を込めている。城にいる女中たちは全員がそもそも私に従順なため、こういった視線を向けられることはなかったし、彼女はなかなかの美少女だ。

 ようやく当たりを引けた。

 思わず口角が上がりそうになる。


「どうしますか?」


 お付きの泥人形の言葉に「私がやるわ。貴方たちはそっちの子供連中を抑えておいて」と舌なめずりをして近づく。


「く、くるな! くるなってばっ!」


 雑に突き出されるピッチフォークの先端をつかまえ力任せに折ってやると、少女は「ひっ……!」と残された柄を放り出した。本来ならこんな野蛮なこととは縁遠いのだろう。

 ゆっくりと近づき少女を捕まえる。と引きつった表情が堪らなく愛おしく思えた。


「お姉ちゃんっ!!」


 弟たちは半分泣きながら少女を呼ぶ。

 それに弱気を飛ばされたのか、「は、はなせっ! このっ!!」と必死に暴れるが、残念なことに私には小さな羽虫がもがいているのと大差ない。


「そんな乱暴な言葉づかいをして良いのかしら? 私が一言命令すれば、可愛い弟さんたちはすぐに死体となって転がってしまうわよ?」


 それに少女が目に見えて焦りを見せた。


「お、弟たちには手を出さないでっ! お願いだから!」

「それだったら……わかるわよね?」


 抵抗をやめた少女を私は近くにあった木のテーブルに押し倒した。

 てっきり殺されるものとばかり思っていたのか、何をするのだろうか、という表情を浮かべた少女の服を一息に破る。


「――っ!!」


 顔が一気に真っ赤に染まる。

 思わず胸を隠そうとするが、そんな些細な抵抗も可愛らしく思え、私の背はゾクゾクとした快感がはいまわった。

 羞恥と恐怖の色で染まった目で私をにらみつける。


「抵抗する? 別に私は構わないわよ。もちろん、その場合は後ろの子たちがどうなるかは知らないけれど」

「こ、この、卑怯者!」

「卑怯者で――結構!」

「ぐ、ぅ……」


 思い切り胸を鷲塚む。

 そんなに大きくない胸をつかまれ少女が苦痛の声を僅かに漏らすが、ここで暴れたらどうなるかは理解したらしい。

 胸の小さな女中は城にもいたが、それでもほとんどの女中は私に愛撫されることを幸福なこととして受け取りがちだ。最初にレイプまがいのことをされた飯綱も、今では私が望めば率先して応えてくれる。それを目の前の少女はぐっと下唇を噛み、ただただ耐える表情を見せる。

 その新鮮さに私の胎は震え、触れてもいないソコが濡れてしまいそうだった。


「さて、最後の審判ね」


 小さな胸を存分に楽しんでから私は少女のショーツに手をかけた。

 僅かに漏れた怯え声に、少女は足でなんとか私の手を防ごうとするが、そんなことは許さない。

 あまり上等とは言えない布で作られたショーツを引き裂き、濡れてもいない膣口に一気に指を差し込んだ。


「が、あっ……!」


 さすがにこれはかなり痛かったとみえて呻くような声を上げた。

 ソコはぎゅうぎゅうにきつく、指で乱暴に動かす度に少女は苦痛に満ちた声を上げた。だが、弟たちを守るためなのだろう。必死にこらえているのがまた愛らしい。

 引き抜くと、私の指には破瓜のものと思える血がついていた。

 多少乱暴にしたと言ってもこの反応にこの血なら生娘だったのは間違いないだろう。


「良かったわね、おませなボーイフレンドがいなくて。中古っていうのは個人的にどうしても好きになれないのよ。例え可愛かったとしても、こういう場面で中古っていうのも萎えちゃうでしょう?」


 自分の顔が醜く歪むのを感じながら、私は少女を犯しはじめた。



 目の前で姉が凌辱されている姿を見るというのもどういった感じなのか?

 そんなことを思ったのは私が気が済むだけ少女を犯しつくした後だった。いや、そもそも弟の前で凌辱されるというのもかなりの苦痛に違いない。

 身体的な痛みに加えて圧倒的な精神的な苦痛。

 それでも、涙を流し、必死に歯を食いしばりながらでもこの少女はよく頑張ったと言えただろう。身体にはあちらこちらに私が愛撫とも暴力とも言える痕がついており、さっきまで清廉潔白そのものだった蜜口は私の手や舌で散々に穢されていた。

 そんな風に散々に楽しんだ私はようやく押さえつけていた少女を解放した。

 彼女もこれで終わったのだとやや安堵の顔を浮かべるが、もちろんそんなわけはない。

 私は泥人形の一体に「この少女は城に連れて帰るから、準備をしておいて」と指示をした。

 そんな、と少女の顔が崩れる。


「この少年たちはどうしますか? 一緒に城へ?」


 律儀な泥人形の質問に「まさか」と私はせせら笑った。


「殺してしまっていいわよ。もう必要ないもの」


 それにひゅっと少女が呼気を呑むのがわかった気がした。


「や、約束が違うじゃない!」

「約束? 約束なんてした覚えはないのだけれど? 誰が貴女が大人しくしていたら弟たちを見逃してあげるなんて言った?」

「こ、この――ぐっ……」


 流石にこれ以上あれやこれやと騒がれても面倒なので首をちょんと叩いて気絶させる。

 その後のことは泥人形に任せ、私は泥人形たちが村で捕らえたという若い子女十人ほどを前に品定めを始めた。

 ここにきてまだどこからか助けがやってくると思えるほど能天気な娘はいないらしい。もうどうあっても逃れられないと知った彼女たちは恐怖を、そして多少狡賢いらしい子は媚びの表情を浮かべている。私に気に入られればひとまず殺されることはないのではないかと考えているのだ。

 けれど、それなりに楽しんだ後でもあるし、見た目にもあの少女が私にとっては一番好みだった。それにまだまだ彼女を使って楽しむことは出来るだろう。


「ねぇ」

「は、はいっ!」


 一番近くにいた少女になんとなく声をかける。


「貴女は私が何かしようとした時に従ってくれるかしら? もちろんそれは理不尽なものだとして」

「も、もちろんでございます! 何でも協力させていただきます!」


 こうなったら少女は生にしがみつくのに必死だ。


「貴女は?」


 つい、と視線をずらして隣の少女に問うと、彼女は「もちろんです! 従います!」と泣き笑いのような表情を浮かべた。

 とりあえず次、次、次、と全員に答えを聞いてみるが、そこにいた少女全員が私に従う意志を見せ、自分の全てを捧げる覚悟があると言った少女もいた。

 それに、私は大きくため息を吐いて近くの泥人形に言う。


「全員殺してしまっていいわ。もう用済みよ」


 それに少女たちは愕然とした表情を浮かべた。私に逆らわなければまだ命は助かるものだろうと思っていたのだろう。

 だからこそ、私は自身の顔が醜く歪むのを感じながら答えてやった。


「別に私は自分に従うだけの子女をはべらせたいわけじゃないの。それだったら城の女中たちで十分だもの」


 その時の彼女たちの表情は多少見ものだった。

 その場で殺されず、僅かでも生きる希望があるかと思った矢先にしては残酷なものだったに違いない。

 騒ぎ、半狂乱になるような子女を泥人形が無機質に殺していく。絶命を迎える際の断末魔は魔族となった今の私にとっては心地の良い音楽に他ならなかった。


「終わりましたでしょうか?」


 全員がその場に死体となって転がってから泥人形の一体が声をかけてきた。何だろうかと思う。口調が若干泥人形のそれと違っていた。


「もしかして気狐かしら?」

「ご名答でございます。無事に通じて何よりです」

「器用なことが出来るのね。これは遠くの相手と話す妖術か何か?」

「そうでございます。が、媒介が必要であったりあまりにも遠すぎると通じなかったりと、私のものは完璧ではございません。必要であれば帰ってから私に一声おかけください。姫さまであればきっと見事に使いこなせるかと思います」

「それじゃあ頼んでおくわ。結構便利そうだもの」


 その言葉に「かしこまりました」と泥人形が傀儡には出来ない見事な礼をする。もしかしたら声だけでなく動きまでもトレースされているのかもしれない。


「それで、今から姫さまはどうされるおつもりで?」

「一人の少女を持って帰ろうと思っているのだけれど……」


 山脈を見やり、ここに来た時のことを考える。私にとっては雪の積もった山脈などその辺の散歩と変わらなかった。が、人間はそうはいかないだろう。泥人形一体に担がせて越えるは良いにしても、


「ただの少女がまともな食料や水、防寒具もなしに例の山を越えられると思う?」

「それは難しいでしょうね。人間そのものはそれほど強靭には作られておりませんから」

「そうよねぇ……」

「姫さま。それであるなら、一つめぼしい妖術を見つけてあります」

「へぇ、どんなの?」

「転移の妖術で、見知った場所なら自在に移動が出来るようになるようです」


 私自身、飯綱を犯した日から妖術のあれこれを調べるようになったけれど、気狐にも今では失われてしまったような妖術を探してくれるように指示をしていた。妖術は昔は多くの魔族が使っていたが、月日が経つにつれて廃れていき、今となっては誰も知らないような妖術も少なくないようだった。今気狐が言っている転移の妖術もそうなのだろう。


「それは便利そうね。早速で悪いのだけれど、教えてもらえる?」

「そうおっしゃられるかもしれないと思い、先ほどすでに泥人形の一体に術式を組み込ませておきました。使役をやめ、瓦解させて姫さまがその通りに術を組めば転移のための妖術が発動するはずです」

「流石ね。気が利いてなによりだわ」

「お褒めにあずかり、恐悦至極にございます」


 再び泥人形が深々と礼をする。

 私は気を失っている少女を抱え、泥人形たちを土に戻した。

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