「くっそー痛ってぇ、貴重なポーション使わせやがって」

　弱いお兄ちゃんが悪いと思うよ。

「やっぱり無茶しないで戻ろ？」

「何言ってるんだ！　戻ったってアイツらに見つかれば殺されるんだぞ！　殺されなくても死んだ方がマシって目に会うのは分かってるんだ！」

「でも、お兄ちゃんのジョブはハンターでしょ？　戦う専門職じゃ無いのよ！」

「ハンターは万能職だ！　弓も剣も小盾も使える。　索敵も隠密行動も出来るんだ！」

「でも、専門職には勝てないじゃ無い！」

「だから無茶してでもレベル上げるんだよ！　極めれば最強のジョブなんだ！」

　あー、だから無茶して強いモンスターの所に行くのか。

「お前こそ、バカ犬のおかげでレベル上がってるだろ？　そろそろ新しいモンスターテイムしろよ。　こんな言うこと聞かない奴じゃなくてよ！」

「ガルルル！」

　このやろー！　またバカ犬って言ったな！

　豆柴スクリュークローお見舞いしてやろうか！

「ダメよ、まだこの子と意思疎通が出来てないのよ！　そんな状態で他の子テイムしたら制御出来なくなる！」

「だけど、何でコイツと意思疎通出来ないんだ？」

「この子がモンスターとしての格が高いからだと思う」

「こんなのが？」

「覚えるスキルの量も、強くなるスピードも、もの凄い早いじゃない。

　今なら、お兄ちゃんより間違いなく強いよ」

　間違いなく強いよ。

「でも、言うこときかねぇじゃ無いか」

「ガウ！」

　それはお前がバカ犬って言うからだろう！

「……この子やっぱり私達の言ってること理解してると思う」

「そんな訳無いだろう。　どう見たって、バカ犬だぞ？　知性のカケラも感じない」

　俺はお前が泣いて謝るまで殴るのを辞めない。

「うお！　何だコイツ！　急に戯れてきたぞ？」

「それ戯れてるんじゃなくて、怒って殴ってるのよ」

　やっぱりスキル無しじゃダメージ通らないか。

「ポルテ、ちょっとお兄ちゃん殴るの辞めて聞いて、地面に○と✖︎書いたから私の言うことが理解できたら○に移動して。

　分かった？」

「アウ！」

　○に移動っと。

「ほら、やっぱり言葉分かるのよ！」

「お前はバカ犬か？　✖︎に移動したぞ、やっぱり分かってないんじゃないか」

「お兄ちゃんはバカ兄ちゃん？　○に移動したわ」

「やっぱりバカ犬じゃ無いか！」

「ワフゥ」

　ユリカ、アイツ殴って良いか？

　えっと、スキルでお手クロウ、おかわりクロウ、からの○をバンバンバンと叩けば分かるかな？

「お兄ちゃんを殴りたいの？　あ、○なのね。　お兄ちゃん！　ポルテがお兄ちゃんの事殴りたいって」

　おー結構言いたい事伝わるな。

「何で殴られなきゃならないんだよ！」

「バカ犬って言うからでしょ！」

　お！　○だよ○！

「だってコイツ、俺の事助けないんだぜ」

「バフン！」

　当たり前だろ○だ○！

「お兄ちゃんがバカ犬とか言うから、助けたくなくなるんでしょ」

　○。

「コイツはお前がテイムしてる魔獣なんだぞ？　主人助けるのが当たり前だろう」

「お兄ちゃんは主人じゃ無いでしょ！　この子の主人は私よ！」

　○。

「同じパーティなんだから助けるのが当たり前だろ？」

　はい、✖︎。

「ポルテもそんな事無いって言ってるよ」

　○。

「てかコイツ本当に俺たちの言ってる事理解してるな」

　○。

「ね、言ったでしょ！　この子は賢いのよ！」

「じゃあ、なんでさっき俺を助けなかったんだ？」

「えーっと、頭？首横に振ってるから…んーっと悪いって事？　何か振りかけたポーションかしら、あ、あってるのね、それから✖︎……あーバカに付ける薬は無いって事？」

　○。

「てめぇ！黙って聞いて……見てりゃ良い気になりやがって！」

　ファイティグポーズからの○。

「かかって来いって言ってるわよ」

「このやろう！」

　ー二分後ー

　うーん、モンスターと戦ってた時みたいな調子が出ないなぁ。

　何でだろう？

「おい、悪かったから、謝るから退いてくれ」

　あ、お兄ちゃんボコボコにして顔の上に乗ってたんだった。

　まぁ、もう少し殊勝な態度とるなら言う事聞いてやらんでも無いよ。

　これジェスチャーで伝えるの大変だな。