第12話

 八時間睡眠。コンディション良し。クラスの席替えまであと五日。日直が一周したら変えるのが、我が二組のルール。

 くだらない周期的な日常と、医学の発展のせいで無駄に延びた寿命を消費、してどうする。

 手始めに、一.五の視力で担任の観察を始める。嫌味なほどの正常っぷり。でも、なにかおかしい。双眼が、違和感を捉える。

 爪が、伸びていないのだ。たいてい、手入れは数日おきのはずだが、こいつは毎日おんなじ長さだ。深爪など見たことがない。マメな性格で片付けるには、あまりに不自然に思えた。

 髪も同様だ。伸ばしても切ってもいない。イメチェンなど以ての他だ。てっきりイメージを固定するためかと思っていたが、そもそも代謝というものが行われていない可能性すら出てきた。

 人間でない何かが、この教室の支配者という事実。

 バタフライナイフを手にしたときの、脊髄を直に風が撫でるような半強制的な昂ぶりが襲う。

 人生はこうでなくては。

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